金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

中国経済を見る難しさ

2009年01月14日 | 社会・経済

昨日(1月13日)テレビ東京の「ガイヤの夜明け」で中国の工場閉鎖の状況を見た。企業倒産や工場閉鎖の状況を見ると、世界的な金融危機の影響を受けて、中国でも雇用状況は急速に悪化しているが、ではどれ位の失業率なのか?などという統計については当てになるものはないようだ。政府の公式統計では失業率は4.2%で変化していないがこれは明らかにおかしい。富士通総研の「金融危機と中国経済」というレポートには「今回2千万人以上の出稼ぎ労働者が失業した」という記述があるが根拠は示されていない。統計の未整備が中国経済を判断する上で最大のネックだ。断片的な記事などから経済や雇用を推定することになる。

ニューヨーク・タイムズによると、昨年12月の中国の輸出は前年比2.8%、輸出は21.3%減少した。これは米ドルベースで、元ベースでは9%減少している。輸出地域別ではEU向けが3.5%減少、米国向けが4.1%の減少、インド向けが1.5%減少、インドネシア向けが12.1%の減少だ。唯一増加しているのは日本向けで2.4%アップだ。

中国の輸出減少は、世界経済の需要減退により引き起こされているので、世界経済が復調するまで、中国の輸出が回復する見込みは薄いだろう。

輸出減少の影響を強く受けている広州(輸出の3分の1近くを担っている)では、昨年62,400の会社やその支店が閉鎖され、60万人が職を失い、同州を去ったと広州の副知事が先週発表している。しかし香港の実業界幹部によると状況はもっと悪く、香港企業が保有する広州の工場の6分の1が閉鎖され、100万人が職を失っているという。6万件の会社の閉鎖というと、日本の昨年の企業倒産件数が1.5万件強だから大変な数だ。

中国の輸出が伸びないのは、先進国の小売業で売れない商品が積みあがっていることが第一の原因だが、貿易ファイナンスが付かないことも大きなマイナス要因だ。中国の輸出業者は決済に対する懸念から、先進国の輸入先に対して信用状を求めているが、信用状の発行コストが日々高くなっている。問題のある業種の問題企業の輸入信用状の金利は年率20%にもなるとバンクオブアメリカでは言っている。

昨年の今頃は「アメリカの景気が鈍化しても、中国やインドなどの発展途上国が世界の景気を牽引する」というデカップリング理論が持てはやされたが、いまやデカップのデの字も見ることが稀になった。もっとも中国やインドの内需はかなり大きいので世界経済を牽引することは難しくても、悪化を食い止める効果はあるという意見があり、私も同感している。

「ガイヤの夜明け」でも、中流以上の中国人が無農薬野菜など高級食材をジャスコで購入する姿を放映していた。このクラスの人口は7千万人以上いるというから中国の内需は大きいといえる。

だが一方2千万人という失業者数はアメリカの昨年の失業者数の6倍以上だ。中国の総人口をアメリカのそれの4倍程度と考えるとと失業者の増加度合いはアメリカよりも大きい。政府が舵取りを間違うと、内需を引き出す前に大きな社会的騒乱が起きる可能性も否定できまい。中国の旧正月から全人代にかけては、中国の社会情勢は要注意だ。

コメント
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