金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

金融コングロ、行き詰まり

2009年01月15日 | 金融

再びアメリカの金融業界がゆれだしている。日経新聞(1月15日)はシティが個人向け証券業務「スミスバーニー」をモルガン・スタンレーに売却する記事の表題を「総合金融 行き詰まり」」としていた。一昔前に最強の金融ビジネス・モデルと思われた金融コングロマリットは、寒冷化した気候に立ちすくむ恐竜のように苦しんでいる。

昨日(14日)はバンクオブアメリカが政府の追加出資を求める一方、メリルを買収するディールを破棄するという噂が株式市場を揺さぶった。事情通によるとバンクオブアメリカは先月メリルに弁護士チームを送り、メリルの経営状態が買収を合法的に取りやめることができるMaterial adverse conditionに該当するかどうか調査した。Material adverse condition条項はM&A契約にしばしば盛り込まれる条項で、契約調印からクロージングの間に買収先の経営状況や資産内容が著しく悪化した場合に、買い手がペナルティなしに契約を解除できる条件を指す。

もしバンカメがメリルの買収を取りやめるとすると、メリルはたちまち経営危機に陥り、リーマンブラザース破綻の悪夢がよみがえるので、市場に寒気が走った訳だ。

バンカメがメリルの買収を取りやめようと考えたのは、経営内容が予想よりも悪化したことによるのだろうが、私は金融コングロマリットというビジネス・モデルを時代遅れと感じたことも影響しているのではないか?と考えている。

環境変化が激しい時代に生き残ることができるのは、大きくて強い生き物とは限らない。恐竜やマンモスが滅びたことを見れば分かる。生き残ることが可能な生き物は、環境に適応できる生き物である。昆虫などの中には数億年を生き抜いてきたものがいる。彼等は小さくて環境に適応できたから生き延びることができたのである。

話は変わるがシティ関連の記事をファイナンシャル・タイムズで流し読みしていたら、最近シティが閉鎖したヘッジファンドで3セントを投資家に返還したという記事があった。3セントというのは1ドルの投資について3セント、つまり3%だけ元本を償還したという話だ。そのファンドの運用は運用方針に沿ったものだったのだろうが、結果してはねずみ講スキームに投資したのと変わらないことになったと言わざるを得ない。

ヘッジファンドもまたその歴史的使命の転換点にさしかかったようだ。こちらもまた過去に強かったからといって将来生き残る保証にはならないのである。

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酔っ払いの知足

2009年01月15日 | うんちく・小ネタ

「足るを知る」という言葉を今年2回見た。一回目は初詣に行った地元の神社の垣根の石に「少欲知足」という文字が刻まれていた。二回目は先日観た映画「禅」の中で道元禅師が遺言として「少欲知足」と述べていた。足るを知るは元々はお釈迦様の教えである。満足することを知ることが、覚りの一歩という訳だ。

映画「禅」によると、釈尊の法統は中国を離れて、道元とともに日本に伝わる。中国で禅は廃れたのだ。うがった見方をすると、物欲が強く現世の幸福を願うことが多い、中国人には「少欲知足」という教え貧乏臭くて定着しなかったのかもしれない。

英語で「足るを知る」をどういうのかインターネットで調べたところ、He is rich that has few wants.「足るを知るものは幸福である」という文章があった。ただし今まで見たことがない表現なので、どれ程使われているのか分からない。

昨年英語の世界では知足の反対Greed「貪欲」という言葉が流行った。「貪欲」がサブプライム・バブルとその崩壊を招いたという文脈だ。言論界で「欲を捨てて足るを知れ」などという主張が声高に叫ばれている訳ではないが、消費の急激な低迷を見ると結果として、多くの消費者は「足るを知る」状態になってしまったようだ。映画「禅」が流行っているのも、不景気下「知足」がなじむからだろうか?

だが急速な少欲・知足は世界経済の過度の緊縮を生み,貧しい人々を益々貧しくさせる。貧困は絶望を生み、絶望は騒乱やテロの元となる。世界を良くするには先進国の消費者が、単に欲を少なくして、足るを知るだけでは不十分だ。貧しい人や地域を積極的に支援する、地球環境を保護するなどの積極的な投資活動が必要である。

仏教用語が出たついでにいうと自利利他(じりりた)という考え方である。この言葉の本来の意味は「利他の実践がそのまま自分の幸せなのだ」ということらしいが、私は「他人を良くすれば回り回って自分が良くなる」と功利的に解釈しても良いと考えている。

今の先進国の状態は昨日までドンちゃん騒ぎしていた酔っ払いが、二日酔いの頭を抱え「酒はもう一切やめた」と言っているようなものだ。余りにも極端である。でも酒好きがしばらくすると又酒を飲みだすように、一旦「知足」教に入った人も少し景気が回復すると又宗旨替えするのだろうか?興味深いところである。

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ヘッジファンドの更なる売り

2009年01月15日 | 株式

年末から年初にかけて、ほんのひと時薄日がさしかけた株式市場が、再び下値を探る気配になってきた。オバマ大統領のご祝儀相場が終わり、経済の足元の悪さが確認されたことと、ヘッジファンドの換金売りが加速していることが原因だ。

ヘッジファンドについては、ファイナンシャル・タイムズによると12月の償還は1,500億ドルと史上最高だった。2008年1年間の流出額は2千億ドルで、ヘッジファンドの総額はピークの半分の1兆ドルに減少した。ヘッジファンドの昨年の損失は-21.7%でS&Pの-37%よりはましだが、投資家は換金を急いでいる。

調査会社のTrimtabsによると「12月は投資家の償還要請に応じなかったファンドがあり、2009年の第一四半期にはこれまで以上の資金流出がある」ということだ。

ヘッジファンド運用会社の報酬の3分の2はパフォーマンス・フィーつまり成功報酬だが、昨年は8割のファンドが、マイナス運用だったので、報酬はガタ落ちだ。また次に成功報酬を得るためには、マイナス分を取り返す必要がある。悪い運用環境が続き、報酬が期待できないとなると、ヘッジファンド運用会社は運用意欲をなくすのではないか・・・・と私は考えている。

もしこのように投資家達が考え、ヘッジファンドから投資資金の回収を加速すると更にファンドは流動性の高い証券を売る必要があり、ますますパフォーマンスが悪化するという悪循環が続くということになる。結局ヘッジファンドが流動性の高い証券の大部分を売りに出すまで、資金の流出が続くということが起きるのだろうか・・・・・。

「冬来たれども春なお遠し」という感じである。

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