再びアメリカの金融業界がゆれだしている。日経新聞(1月15日)はシティが個人向け証券業務「スミスバーニー」をモルガン・スタンレーに売却する記事の表題を「総合金融 行き詰まり」」としていた。一昔前に最強の金融ビジネス・モデルと思われた金融コングロマリットは、寒冷化した気候に立ちすくむ恐竜のように苦しんでいる。
昨日(14日)はバンクオブアメリカが政府の追加出資を求める一方、メリルを買収するディールを破棄するという噂が株式市場を揺さぶった。事情通によるとバンクオブアメリカは先月メリルに弁護士チームを送り、メリルの経営状態が買収を合法的に取りやめることができるMaterial adverse conditionに該当するかどうか調査した。Material adverse condition条項はM&A契約にしばしば盛り込まれる条項で、契約調印からクロージングの間に買収先の経営状況や資産内容が著しく悪化した場合に、買い手がペナルティなしに契約を解除できる条件を指す。
もしバンカメがメリルの買収を取りやめるとすると、メリルはたちまち経営危機に陥り、リーマンブラザース破綻の悪夢がよみがえるので、市場に寒気が走った訳だ。
バンカメがメリルの買収を取りやめようと考えたのは、経営内容が予想よりも悪化したことによるのだろうが、私は金融コングロマリットというビジネス・モデルを時代遅れと感じたことも影響しているのではないか?と考えている。
環境変化が激しい時代に生き残ることができるのは、大きくて強い生き物とは限らない。恐竜やマンモスが滅びたことを見れば分かる。生き残ることが可能な生き物は、環境に適応できる生き物である。昆虫などの中には数億年を生き抜いてきたものがいる。彼等は小さくて環境に適応できたから生き延びることができたのである。
話は変わるがシティ関連の記事をファイナンシャル・タイムズで流し読みしていたら、最近シティが閉鎖したヘッジファンドで3セントを投資家に返還したという記事があった。3セントというのは1ドルの投資について3セント、つまり3%だけ元本を償還したという話だ。そのファンドの運用は運用方針に沿ったものだったのだろうが、結果してはねずみ講スキームに投資したのと変わらないことになったと言わざるを得ない。
ヘッジファンドもまたその歴史的使命の転換点にさしかかったようだ。こちらもまた過去に強かったからといって将来生き残る保証にはならないのである。