30年位前運動部で活動していた人なら「運動中あまり水を飲むな」と先輩に言われたことを覚えているだろう。私も山岳部で山に登っていた時は「水を飲むとばてる」とよく言われたことを思い出す。ところが今スポーツジムでエアロビクスなどに参加すると運動する前から水分を取ってくださいとインストラクターが言う。何時からこう変わったのかは分からないが、水分補給や運動前後の食事の取り方などが、スポーツ栄養学のテーマになっているから面白い。
ニューヨーク・タイムズにピッツバーグ・メディカル・センター大学のBonci教授(スポーツ栄養学専攻)との一問一答が出ていたのでポイントを紹介しよう。夏山のシーズンも近いから私の山仲間にも多少参考になるところはあるだろう。
同教授によると「運動と食事」について一般に二つの大きな間違いがある。それは「運動の前に何も食べないこと」と「運動の前に食べ過ぎること」だ。運動の前に何も食べないと疲労がかさむし力がでない。食べ過ぎると胃がもたれる。
同教授は「運動を始める1時間前に握りこぶし大の食物を食べるのが良い」という。握りこぶし大の食べ物とは例えばグラノーラ・バー(麦と蜂蜜などを混ぜて焼いたもの)でも良い。カロリーは150から200カロリー程度。ピーナツ・バター・サンドイッチも良い。ピーナツ・バター・サンドが良い理由は、炭水化物とたんぱく質が混じっていて、しかも安くて腐らないからだ。
また運動が終わった後15分以内に軽く栄養補給することも大事。これは運動で消費したグリコーゲンを筋肉内に再合成することを促進するため。
また同教授は水分の取り方についても述べている。「大部分の人は1時間に8オンス(224g)の水分を摂取するが、これでは不十分で汗をかく程度にもよるが、14オンス(392g)から40オンス(1.1kg)の水分を取るべきだ」「水を飲む時はチビチビ飲むのではなく、がぶ飲みする方が良い。何故ならがぶ飲みする方が胃が刺激されて水分の吸収が早まり、早く胃が空になるからだ」
以上の専門家の話は大いに参考になるところがあったが、山登りに関しては若干の問題もある。参考になる点はピーナツバターサンド。これから山の昼食用に利用してみよう。特に数日間山を歩く時はエネルギー・バー以外にパンとピーナツバターという組合せは良いかもしれない。
問題は水分の方だ。一時間にペットボトル1本もの水を飲むとすると、水場の少ない尾根筋では水を運ぶだけで大変だ。Boci教授は「水を運ぶかお金を運ぶかですよ。お金で飲料は買えるから」と冗談めかして述べている。登山に適用すると時には高いお金を払って山小屋から清涼飲料を買いなさいということだろうか?それとも私が実践しているように、出来るだけ汗をかかないようにゆっくりしたペースで登るべきだろうか?