金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

Lock down (イディオム・シリーズ)

2009年07月07日 | 英語

Lock downとは「厳重監禁」という意味で、名詞としても動詞としても使われる。7月5日日曜日に新疆省の州都ウルムチで発生した暴動についてファイナンシャル・タイムズに次の文章があった。

China locked down Urumqi, the capital of its northwestern Xinjiang province,on Monday as officials said 156 people had killed in rioting, in the worst etnic unrest in the country since the Cultural Revolution.

中国政府は月曜日に北部新疆省の州都ウルムチを厳重な監視下においた。政府発表によると暴動で156人が死亡した。これは文化大革命以降最悪の民族暴動である。

新疆省は現在は新疆ウイグル自治区とよばれ、首長にはウイグル人がついているが、実権を握っているのは共産党幹部の漢人である。今回の暴動の直接的な原因は先月おもちゃ工場で漢人とウイグル人の衝突があり、二人のウイグル人労働者が死亡したことについて、当局の調査を求める平和的なデモ隊と警官の衝突に端を発するといわれている。

中国当局はワシントンに亡命しているウイグル人の女性指導者Rebiya Kadeerが裏で暴動を操っていると非難したが、彼女は否定している。

暴動の根本的な原因は新疆ウイグル自治区の45%を占めるウイグル人が移入してきた漢人に差別され、経済的に不利な状態におかれ不満が鬱積したこと・・・というのが、西側メディアの見解である。

ところでこのニュースは昨日中国メディア・新華社の英文HPでも見ることができたが、新華社の日本語HPは一言も触れていなかった。日本語HPは中国経済に関する話題ばかりである。新華社の日本語HPの担当者が忙しくて手が回らないのか、それとも日本人向けには経済情報だけ流しておけばよいと上層部が判断しているかは分からないが、日本はすっかり軽視されている。それはさておきこの新疆地区の暴動は規模と当局の対応などからかなり大きな問題となる可能性があるだろう。

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公的年金の運用損、本当はどうすれば良いのか?

2009年07月07日 | 社会・経済

保坂展人という社民党衆院議員がいる。私は社民党とは異なる政治スタンスだが、保坂氏のブログhttp://blog.goo.ne.jp/hosakanobuto/は時々読んでいる。参考になるところもあるからだ。その中に年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が昨年度9.6兆円の巨額の損失を出した件に関するコメントが出ていた。その一部に「国民の老後を保障するはずの年金資金が9・6兆円飛んだ……これは、他の国であれば大問題。数百万人のデモが政権の「運用責任」を問うてもおかしくない」という文章があった。揚げ足をとる訳ではないが、今回の世界的な金融・経済危機で、年金資産の運用で大きな損失が出ているのは日本だけではない。米国の国の年金自体は国債運用オンリーなので、大きな損失は出していないが、地方自治体の年金基金はカルパース(カリフォルニア州職員退職年金基金)を始め、相当な運用損を抱えている。しかしながら寡聞にして政府(地方を含めて)の運用責任を問う大きなデモが起きているというニュースは見たことがない。資産運用ではプラスのリターンを得ることもあれば、マイナスのリターンに終わる年度があることは国民が承知しているというべきだろう。

もっともそれでは今の公的年金の運用姿勢が良いか?というと私は違うと考えている。

一つは厚生労働省が今年の2月に発表した4.1%の利回りが高過ぎるという点だ。GPIFの資産構成は、国内債券が67%、国内株式が12%と国内資産が8割を占め残る2割強を外国債券・株式で運用している。今国債利回りを1.5%(現在の10年物流通利回り程度)、日本株のリスクプレミアムを1.3%とすると国内株利回りは2.8%となる。株式リスクプレミアムを1.3%とした根拠は7月2日の日経新聞に山口勝業氏(イボットソン・アソシエイツ・ジャパン)が発表していた過去25年間の統計データによる。現在の株式プレミアムはかなり低下しているので、株式運用で利回りを稼ぐことは難しい。

この前提で年金資金全体の利回りを4.1%にするには、外国債券・株式の利回りを13.1%以上に高める必要があるが、これはありえないことだろう。

前述の保坂氏のブログは枡添厚生労働相の「積立金150兆円のうち10兆~15兆円をファンドなどの形で切り出してハイリスク・ハイリターン運用をするのがいいのではないか」という談話を紹介しているが、10兆円やそこらの資金をハイリスク・ハイリターンに振り向けたところで、4.1%の利回りを達成することは出来ない。それにそもそも「ハイリスク」であるから損失を出すリスクも高い訳だ。またヘッジファンドの運用そのものが日本経済のプラスになる運用を行っているとも限らない。以上のように考えると国民の資金である年金基金を使って博打をうつようなアイディアはかなり無責任な発言だ。

では公的年金の運用をどうすれば良いか?というと私は「年金積立金と有価証券運用資産を減らす」ことにあると考えている。「少子高齢化が進む中で積立金を減らすとは何事?」と思われる人がいるかもしれないが、国債や株式という有価証券の運用を減らし、人材に対する投資を増やすのである。つまり年金資産をもう少し出生率を上げることや優秀な若い世代を育てることに使うのである。国の年金は個人で積み立てる年金や企業年金とは根本的に違う。個人や企業の年金では、将来の支払源資を分別しておくことが重要だが、国の年金制度は世代間の相互扶助という観点から考える必要がある。

公的年金の年金資産でヘッジファンドに投資することを総て悪いことという訳ではないが、その一方で安定収入のある仕事に就くことができない若者が増えているとすると、それは国全体としては、効率的な資産配分を行っていないことになる。職業訓練を受けた若者が、安定した収入を得てその中から税金と社会保険料を負担していくならば、年金を含む社会保障制度は安定していく。その投資効果はヘッジファンドに投資するよりもはるかに高いと私は考えている。

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