金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
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民主党は官僚とどう折り合いを付けるのか?

2009年07月17日 | 政治

昨日某銀行で業務部に勤務していた人と会食をした。業務部という部署は官僚や政治家連中の窓口であるから、彼も担当時代は民主党の議員連中とも接触があった。彼がいうには「民主党の若手議員さんは僕らの話を真剣に聞いてくれますよ。彼らの中には官僚が嫌で霞ヶ関を飛び出した人も多く、官僚との対決を掲げています。でも政権を取るとそれでうまく行くのでしょうか?」

今日エコノミスト誌を読むと奇しくも同じ懸念が述べられていた。It has declared war on a discredited bureaucracy without acknowleding the need to harness bureaucratice energies to new policices.

「 民主党は新しい政策に官僚のエネルギーを利用する必要性を認めることなく、信頼を失った官僚機構に対する戦争を宣言してきている」

エコノミスト誌の指摘は、民主党が政権を取ることに懸念を示す人の意見を分析した中の一つだ。エコノミスト誌は懸念を抱く人に十分な理由があるとして3つの理由を示している。一つ目は「うまくいきそうもない社会主義者と旧自民党出身者の寄せ集めで、首尾一貫した政策がない」という点だ。二つ目が今述べた「官僚無視のスタンス」だ。そして最後が「麻生政権の景気刺激対策を財政負担を増やすとこき下ろしたにもかかわらず、民主党が掲げる政策は更に財政を悪化させる懸念がある」という点だ。

エコノミスト誌は以上の問題点を指摘しながらも、それでも日本は今民主党が必要なのだと言う。その最初に理由は「新しい政府の枠組み」だ。というのは自民党政権下では、政府が「良い政策」を提言しても派閥のボスの既得権益を損ねる場合、しばしば自民党により妨害されてきたからだ。これに対しエコノミスト誌は民主党はより厳格な党の規律を持っているので、「良い政策が法律化される」メカニズムを確立する可能性があると述べる。

次に日本に「政権交代のメカニズム」が必要だと同誌は述べる。民主党が選挙で勝つと今後各党が選挙民に訴求力のある政策を掲げるインセンティブが生まれ、日本に良い政府が誕生するかもしれない・・・という主張だ。

そしてエコノミスト誌は「民主党が弱い公約を掲げて政権をとっても政権の座に長くとどまることはないだろう」と延べ、自民党の中から構造改革派が同党を去ると日本は政治的に不確実な時代に入ると予想する。「弱い政策」というのは「首尾一貫したポリシーがない」ということと同義だ。

以下若干のコメントを述べよう。

今度の総選挙で民主党が勝つことは、世論調査の結果からほぼ確実なことだ。民主党が勝つということは恐らくエコノミスト誌が述べるように「政治的に不確実」な時代に入るということだ。今まで自民党と官僚機構は「安定した」政治の枠組みを作ってきたので、このことに不安を感じない訳ではない。だが考えてみると政権以外のこと、例えば経済活動や年金などの社会保障の問題は「政局」以前のはるか前から「変化の時代」に入っていた。「変化の時代」はグローバリズムと情報通信革命つまり1990年頃から加速している。93年に自民党は一度政権の座を離れたが、本当はこの時が二大政党政治に変わるべき時期だったのかもしれない(これは私見だが)。変化の時代に対応するには、新しい政策を打ち出し国民の判断にゆだねる必要があったからだ。

ところで官僚機構というものの本質は「変革を好まない」ものだと私は考えている。またある意味変わらないことが必要なのだと考えている。何故かというと官僚の基本機能の一つはデータベースだと考えているからだ。どんなデータベースかというと国民の収入や年金の受給権の状況あるいは道路などの国有財産の状況を把握する巨大なデータベースなのである。データベースはデータを更新することはあっても、基本データを失うような「変化」を起こしてはいけない。(年金の掛金情報等のデータが不正であるということは、データベースとしての官僚機構が信頼を失ったことを意味する)

本来データベースはその受益者である国民に判断の基礎となるデータを提供する機能でなくてはならないが、データを出し惜しみしたり、複雑きわまるマニュアル(法令など)を制定して、自らの存在意義を確保しようとしているのが今の官僚制度の問題点なのだ。

官僚制度を変えるには政権交代とともに、政策決定に関与する高級官僚を変える・・・いわゆる政治任用という方法も理論的には一つの選択肢だ。民主党は高級官僚を政治任用(ポリティカル・アポイントメント)するアメリカ型の官僚機構構想を持っている。ただし日本の雇用制度・慣行の中で実現するのは困難だ。アメリカに範を求めるだけでなく、他に民主主義国の制度も国民に伝え判断を問うべきだろう。例えば英国では政党に協力するシンクタンクを作るとともに、閣僚以外の国会議員が官僚と接触することを禁じている。これも国会が「立法権」を確保する方法の一つだ。

民主党が官僚制度とどう折り合いをつけるか?という点は同党のマニフェストで大事なポイントだと私は考えている。

コメント (1)
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