前のブログで週末に櫛形山に登った時、同行者の人が両足の痙攣に見舞われるという小さなアクシデントがあったことを書いた。夏山シーズンが近いことか足の痙攣予防などについてちょっと考えてみた。
まず最初に思い出した言葉は「魔の2時」という言葉だ。これは登山中の事故が午後2時前後に集中していることを指す言葉だが、同行者の痙攣はまさに午後2時直前に起きたからだ。「山岳遭難の構図」(東京新聞出版局:青山 千彰著)は、山岳事故を統計的に分析した本だが、統計からも「日帰り登山の事故は午後2時頃に集中する傾向」が明らかになっている。また同書は「山行行程を登りの2行程、降りの2行程に分けた場合事故は4分の3行程に多く発生する」ことを示している。午後2時=4分の3行程とすると2つのデータは同じことを示している。
午後2頃に事故が集中する理由は「疲労の蓄積」と「注意力の散漫」や「ルートの危険性」がこの辺りで交差することにあるのではないか?と私は考えている。「疲労の蓄積」だけから見ると行程の4分の4である下山地点がピークになるが、一般に下山口付近は山里に近く登山道の危険性は低いことが多い。一方急斜面をトラバースするとかガレ場を下るという転倒・転落の危険性は山頂部や中間部で高いと考えられる。
さて筋肉の疲労についてだが、筋肉の負担は登りよりも降りの方が大きい。これは下山が「筋肉を引き伸ばしながら力を発揮する伸張性収縮」という筋肉の動きを伴うからだ。強い伸張性収縮を行うと筋繊維が切れる。登山の翌日以降に筋肉痛になるのは筋繊維が切れたことによる痛みだ。
「足がつる」原因には色々なことがあると言われているが、病気による痙攣を別とすると「疲労物質の蓄積」「脱水による水分バランスの崩れ」「電解質(カルシウム・カリウム・マグネシウム)の濃度異常」などが主な要因のようだ。
汗をかくと水分が減るとともにカルシウム等のミネラルも流れ出るので、これを補う必要がある。梅干などを食べるのも良いし、ポカリスエトなどミネラルに入ったスポーツ飲料を飲むことも有効だ。「バナナにはカリウムが入っているのでバナナを食べると良い」という記述もあるが、暑い夏山ではバナナはズルズルになってしまいそうだ。
なお今のところ私は使っていないがダブル・ストックも下肢の負担を軽減する上で有効だという意見が多い(欧州のトレッキングではダブル・ストックが常識だそうだ)。もっともダブル・ストックに頼り過ぎた故の滑落事故という話も聞くからダブル・ストックも魔法の杖ではないようだが。
いずれにしてもこれからの登山では「午後2時」にもっと注意しよう。今自分が「危険時間帯」に入っていると自覚することで未然に防げる事故もあるだろうと私は考えている。