新生銀行とあおぞら銀行の合併に関するファイナンシャル・タイムズの記事を読むとかなり厳しい評価だった。Few mergers in Japan hace generated as much bewildement as the plannde integration of Shinsei and Aozora.
「新生銀行とあおぞら銀行の統合(正確には合併)より、困惑させられる合併は日本にはほとんどない」
FTは新銀行のビジネス・モデルについて多くの人が不安を抱いているとして、日興シティグループの野崎アナリストのコメントを紹介している。「顧客基盤が弱く、安定した収益源をほとんど持たない両行の合併にシナジー効果はほとんど期待できない」
余りに厳しい評価なので、野崎アナリストのオリジナル・コメントを見てみた。たまたま私は日興コーディアルに口座を持っているので、日興シティのアナリスト・レポートを読むことができる。それを見るともう少しモデレートなコメントで「プラス面は持株会社方式ではなく、合併であること。両行の海外投融資がプラスに転じる可能性があること」とし「マイナス面は新生が進めてきたノンバンク・ビジネスのリスク」とする。株価については両行の株価は150円台だがターゲットは250円。ただしリスクは高いと述べている。
ところでこの日興コーディアルだが、5月1日に当局の合意を前提に三井住友ファイナンシャル・グループ(SMBC)に譲渡することが発表されている。また資産運用業務を担っている日興アセットについては一千億円超で住友信託が買収する方向でシティと最終調整に入っている。さらに買収後の日興アセットにSMBCが出資するという記事が朝日新聞(ネット版)http://www.asahi.com/business/update/0703/TKY200907020367.htmlに出ていた。
SMBCが日興アセットに出資すると、投資信託の製造(日興アセット)から販売(日興コーディアル)まで傘下に持つことができる訳だ。もっとも日興アセットに対するコントロール・パワーは住信との出資比率によるが。
距離を保ってきたSMBCと住信だが、住信が日興アセットをお土産に親密化を高める可能性はあるかもしれない。そう推測する理由は「金融危機後のビジネスモデルはどうあるべきか?」と考えていくと幾つかのことが浮かんでくるからだ。
まず世界的な金融機関に対する規制強化から「資本の大きさ」が求めれるからだ。「大きさ」は絶対的なボリュームと「中核(普通株)自己資本比率の高さ」だ。次に「日本で証券・銀行の垣根が低くなった」ことだ。これは世界の潮流とは逆行するが、証券をグループ傘下におくメガバンクには、大企業向けに銀行・証券のフルラインビジネスを提供することが可能になった。逆にユニバーサル・バンクでないと大企業取引で太刀打ちできないことが一層明確になった。リーマンショック以来半年ほど銀行は優良企業に見たこともない程高いスプレッドで融資を行うことができたが、泡沫(うたかた)の夢だった。資金調達が以前の環境に戻ると真剣にビジネスモデルを再構築する必要が出てきた。
個人客を対象とする資産運用業務は金融危機で頓挫しているが、国内では数少ない有望ビジネスだ。だが少子高齢化と長引く(だろう)不況は個人の運用資産を蝕む可能性が高い。つまりここでも限られたパイを巡って熾烈な戦いが行われる。とすれば日興アセットのようなブランドは貴重な武器だ。
表面上金融危機が一段落したこの時期に新生・あおぞらの合併が発表され、日興シティの中核部分がSMBCに買収される可能性を見ると、日本の金融界に一つの再編機運が出ていると私は感じている。