16日から17日にかけて、北海道大雪山山系・トムラウシ山と美瑛岳で旅行会社企画のツアー登山者が10名低体温症で死亡するという誠に痛ましい事故があった。亡くなった方はほとんど60歳代の方だ。
事故の詳しい状況や原因については知らないのでそれに関するコメントを差し控えるが、最近私が経験から感じた「企画登山ツアー」のリスクについて少し思うところを述べたい。
一つは先月埼玉県の100名山の一つ両神山に登った時、少し前を企画ツアーのグループ十数名が登っていた時感じたことだ。両神山には数ヶ所鎖やロープが設置された岩場があるが、このような場所に差し掛かるとグループの中に何人か通過に手間取る人がいて大変時間がかかったことだ。これには二つの理由がある。一つは狭い山の中で大人数が一緒に行動すること自体に無理があるということだ。次にツアー企画で集めた登山者達の技術・体力レベルにはバラツキがあり、時にはコース標準タイムで行動できない人が参加している場合がある。登山は一番弱い人に合わせて行動することが大原則だからグループ全体が遅れ、予定時間を超過することも出てくる訳だ。予定時間を大幅に遅れると夜間行動になる場合も考えられリスクが増加する。
次の経験は先週山梨県の櫛形山に総勢14名で登った時の経験だ。我々のグループは某ローターリークラブのトレッキング愛好会をベースにしたグループだったが、発足したばかりなので、全員が顔見知りという訳ではなかった。甲府駅からチャーターしたバスで発車しようとした時「念のため全員いるかどか数えましょう」ということになり、頭数を数えると一人足りない!慌てて駅前まで戻りウロウロしていた一人を見つけた次第。無論このような初歩的ミスは旅行会社企画の登山ツアーでは起こさないだろうが、暴風雨下や暗闇の中になると、大人数の確認を行うことは容易ではない。これが日頃から一緒に山に登っているグループなら「誰それさんがいない」などということがもっと簡単に分かるだろう。
ついでにいうと櫛形山登山では下山時に一人の方が両足を痙攣させるというちょっとしたアクシデントがあった。少し休んでいる内に快方に向かったので事なきを得たが、この情報は先頭を歩いていたグループには伝わらず、先頭集団は駐車場まで下っていた。つまり大人数のグループではちょっとしたことで、グループがばらばらになるリスクがあるということだ。
登山中に気分が悪くなったり、足を痛めたりすることは時に起きることである。この場合早目に兆候を見つけて無理をしないでリカバリーを図るというのが本人の責任なのだが、集団登山の場合つい無理をする傾向があるのではないだろうか?無論「一人ではがんばれなかったけれど、皆と一緒だったので登ることができた」という集団効果も大きいので一概に集団登山は良くないとは言えないのだが。ただ体力差が比較的少ない中高生などに較べて、中高年は体力の個人格差が大きいので、注意しておきたいことだ。
旅行会社企画の登山ツアーが未組織の登山者に「安くて便利で安全な登山機会」を提供していることを否定する積もりはないけれど、大人数の登山にはそれ故のリスクが潜んでいることも理解しておく必要があると私は考えている。