昨日(6日)オバマ大統領は嫌々ながらも、共和党と妥協し、ブッシュ減税を2年間延長することにした。オバマ大統領は所得上位層2%については減税を打ち切る方針だったが、それを押し通すだけの上院議員数を確保していないという現実の前で妥協せざるを得なかった。
一方大統領は全所得層における減税延長と引き換えに、長期失業者に対する失業給付の13ヶ月延長を取り付けた。また社会保障税の2%カットの1年延長、一部の設備投資コストの費用化(一括償却であろう)、大学の学位の免税等について合意がなされた。
そのコストについてニューヨーク・タイムズは向こう2年間で9千億ドルと予想している。この9千億ドルは総て国債発行で賄われることになる。9千億ドルというと米国のGDPの2%を超え、日本の国家予算(平成22年度92兆円)の8割に迫る数字だ。
もっともオバマ大統領はこれから民主党内の合意を取り付ける必要がある。仮に合意を取り付けることができたとすると、この景気パッケージは今年2月にオバマ大統領が計画した予算よりも大きなものになる。
互いの主張を通すために相手の主張を認めていった結果、当初よりも財政赤字が大きくなる・・・・Austerity(倹約)という言葉は欧州では流行語になったが、米国では簡単には流行語にならないようだ。
米国で増税案が可決されたのは1993年のガソリン税が最後。商務省の報告書によると、2009年の時点で、個人所得に占める税金の割合は9.2%と1950年以降の最低値だそうだ(「アメリカン・デモクラシーの逆説」岩波新書による)。
ブッシュ減税の見直しは次回大統領選挙の直後へ持ち越された。この間に米国に債務危機が発生するとは考え難いが、減税打ち切りをスローガンにして選挙を勝ち抜くことも難しそうだ。ただし大きな景気刺激策の結果、景気回復ピッチが早まると財政再建を俎上にのせることができるだろう。今はそれを期待するしかないのだろうか?