金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

大盤振る舞いの米国、どこで帳尻を合わせるのか?

2010年12月07日 | 社会・経済

昨日(6日)オバマ大統領は嫌々ながらも、共和党と妥協し、ブッシュ減税を2年間延長することにした。オバマ大統領は所得上位層2%については減税を打ち切る方針だったが、それを押し通すだけの上院議員数を確保していないという現実の前で妥協せざるを得なかった。

一方大統領は全所得層における減税延長と引き換えに、長期失業者に対する失業給付の13ヶ月延長を取り付けた。また社会保障税の2%カットの1年延長、一部の設備投資コストの費用化(一括償却であろう)、大学の学位の免税等について合意がなされた。

そのコストについてニューヨーク・タイムズは向こう2年間で9千億ドルと予想している。この9千億ドルは総て国債発行で賄われることになる。9千億ドルというと米国のGDPの2%を超え、日本の国家予算(平成22年度92兆円)の8割に迫る数字だ。

もっともオバマ大統領はこれから民主党内の合意を取り付ける必要がある。仮に合意を取り付けることができたとすると、この景気パッケージは今年2月にオバマ大統領が計画した予算よりも大きなものになる。

互いの主張を通すために相手の主張を認めていった結果、当初よりも財政赤字が大きくなる・・・・Austerity(倹約)という言葉は欧州では流行語になったが、米国では簡単には流行語にならないようだ。

米国で増税案が可決されたのは1993年のガソリン税が最後。商務省の報告書によると、2009年の時点で、個人所得に占める税金の割合は9.2%と1950年以降の最低値だそうだ(「アメリカン・デモクラシーの逆説」岩波新書による)。

ブッシュ減税の見直しは次回大統領選挙の直後へ持ち越された。この間に米国に債務危機が発生するとは考え難いが、減税打ち切りをスローガンにして選挙を勝ち抜くことも難しそうだ。ただし大きな景気刺激策の結果、景気回復ピッチが早まると財政再建を俎上にのせることができるだろう。今はそれを期待するしかないのだろうか?

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極東をにらむ中国のミサイル網(エコノミスト誌から)

2010年12月07日 | 国際・政治

エコノミスト誌が「ディリーチャート」で中国のミサイルの射程レンジを紹介していた。何故今?と気になるところだが、まず記事の概要を見よう。

中国は米国の第一次湾岸戦争における「砂漠の嵐」作戦や1996年の台湾海峡ミサイル危機の時、米国が空母二隻を派遣したことを見て、人力による国防に依存できないと感じた。そこで中国はミサイルへの投資を強化した。一隻150億ドルから200億ドルする航空母艦を建造するよりミサイルを実装する方がはるかに安上がりだ。エコノミスト誌はミサイル一個100万ドルと述べている(恐らく短距離ミサイルか?)。

米国防省は「世界でもっとも活発な地上ベースの弾道ミサイルと巡航ミサイルプログラム」と中国のミサイルシステムを描写する。

エコノミスト誌のチャートによると中国のミサイルは短・中距離ミサイルに集中している。

DF-11射程距離300km(台北が射程距離)、DF-15射程距離600km(沖縄が射程距離)、DH-10射程距離1,500km(日本全土が射程距離)、この3つのミサイルの数は201~750と推定されいる(Center for military and budget assessmentによる)。この内DH-10(東海10)は空対地巡航ミサイルだ。巡航ミサイルは飛行機と同じくジェットエンジンと翼を持つミサイルで、米国のトマホークなどがこれにあたる。巡航ミサイルは速度は弾道ミサイルより遅いが、命中精度は高い。

エコノミスト誌は軍事専門家の「ミサイル戦争が起きた場合の第二回目の攻撃は、ミサイル基地がターゲットになるので、アジアの米軍基地や日本がリスクに晒される危険がある」という言葉を紹介している。

またアメリカのストラテジストが注目しているのが、DF(東風)-21ASBMという弾道ミサイルだ。ASBMとはAnti-Ship-Ballistic- Missile(対艦弾道ミサイル)の略称。最大射程距離3,000km(エコノミスト誌の記事では2,500kmの図が出ていた)のこのミサイルは地上から航空母艦を攻撃することができる世界唯一のミサイルといわれている。しかも「マーブ」と呼ばれる機動核弾頭を装備することが可能だ。このためこのため米国艦隊は中国沿岸に接近することが困難だろうとアメリカのストラテジストは見ている。

☆  ☆  ☆

どうしてエコノミスト誌がこの時期に中国のミサイル戦力を記事にしたのかは不明。しかし米韓演習で米国が圧倒的な空母力をデモしても、安心はするなという警鐘と受け止めておいて良いだろう。

私は北朝鮮のミサイルは性能面でそれ程恐れるには足りないと思っている(もっとも狙ったとこころに当らず狙っていないところに当る怖さはある)。だが中国のミサイル戦力は恐るべしと思っている。それが米国機動部隊に対する抑止力としてのみ機能うることを望むのみである。

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Wimaxスマートフォンはリリーフ投手で終わるか?

2010年12月07日 | デジタル・インターネット

今日(12月7日)の日経新聞朝刊に「KDDIがWimaxに対応したスマートフォンを2011年の早い時期に国内で初めて発売する」という記事が出ていた。これはNTTドコモが来年末にも投入を計画している次世代通信「LTE(ロング・ターム・エボリューション)」対応のスマートフォンに対応するためだ。

LTEは現在の携帯電話網(3G回線)と次世代(4G)の通信回線の間に位置付けられる通信回線で3.9世代とも呼ばれている。LTEが目指す通信速度は最大(下り)で100メガビット/秒。つまり光回線並の通信速度を目指している。

一方Wimaxの通信速度は最大(下り)40メガビット。これだけを見るとLTEに軍配は上がりそうだが、LDEの実現可能な通信速度は50メガビットと言われているから、体感速度はそれ程違わないかもしれない。

だとすればWimaxとLTEの利用面での違いは何だろうか?一つは「料金」これはまだ不明。次は「利用可能地域」こちらは携帯電話網を使うLTEが圧倒的に有利だ。Wimaxは首都圏等大都市圏はカバーしているが山間部等のカバーはない(WimaxスマートフォンではWimax通信網がカバーしないところは3G回線を使う)。

KDDIは2013年(一説では12年)にはLDEサービスを開始する予定だから、Wimaxスマートフォンは「つなぎ投手」で終わるのではないか?と僕は思っている。もっともKDDIユーザで少しでも早く通信速度の速いスマートフォンを手に入れたいという人にはソリューションを提供しているが。

コメント (1)
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