ハーバード大学のJoseph Nye教授が日本の右傾化に警鐘を鳴らす寄稿をFtに寄せていた。
タイトルはJapan's nationalism is a sign of weakness.
総選挙や都知事選を半月後に迎える日本の政治情勢を海外のクオリティペーパーはどう見ているのか?と思って時々FTなどを見るがほとんど話題になっていない。その理由を推測すれば、「どの党が勝っても安定政権は生まれず、回り灯籠のような政権交代が繰り返され、日本が抱える問題は何ら解決されない」「誰が首相になろうと、世界の経済成長にプラスの影響を及ぼすほどのことはない」、だから世界はほとんど注目していいない、ということなのだろう。
そんな中で最近尖閣問題に関する米国のポジションを説明するため北京を訪問したナイ教授は中国の政治家の懸念を伝えている。
それは尖閣諸島を政府が購入することは、カイロ宣言やポツダム宣言をなし崩しにするというものだ。
もっとももナイ教授は日本が戦前つまり1930年代の軍国主義に戻ろうとしている、と懸念している訳ではない。教授は本当の問題は「日本が国際問題でパワフルになり過ぎることではなく、弱体化して内向き指向になることだ」と警鐘を鳴らす。
ナイ教授は選挙で右派勢力が勢力を増すようなことがあると、中国の反発が強まり、またそれに対する日本の反発が強まる警告する。
★ ★ ★
中国の尖閣諸島に対する行動が挑戦的になってきたので、石原前東京都知事が都で尖閣諸島を購入しようと動き、最終的には国が買うことになった、というのがことの流れなので、ナイ教授が中国高官の発言のみを伝えているのは、少し公平を欠く。心ある人はFTに反論を投じて世界に誤解を抱かさないようにするべきだろう。
以上のような問題はあるものの、日本の選挙民が威勢が良く、耳ざわりの良い意見に流されるのではないか?というナイ教授の懸念はもっともな部分がある。
懸念するべきことは、世界の情勢を詳しく分析し、日本の立ち位置を正しく認識することなく、軍備問題を語ることなのだろう。集団的自衛権に賛成するにしても、反対するにしてもである。観念論は非常に危険だ、と私は思っている。
そのためには世界に肌で触れなければいけない。バブル崩壊後の低成長の20年は、かなりの日本企業の内向き指向を高めた(無論この間世界に飛躍した日本企業もあるが)。そのことから特に若い世代に、世界で競争しようという気概が減っているように思われる。
右であれ左であれ、まず素直に自分の目で世界を見ることから始めるべきだろう。