FTによると、鉄鉱石価格は過去4ヶ月で6割上昇している。2002年にはトン当たり13.8ドルだった鉄鉱石は中国のインフラ投資需要により上昇を続け、2011年初めにはトン当たり200ドルに達していた。その後中国景気の停滞感が顕著になってきたので、鉄鋼メーカーは鉄鉱石の在庫圧縮に動いた。その結果今年9月には鉄鉱石価格は過去3年の底値であるトン当たり88ドルまで下落した。しかし中国の鉄鋼メーカーが、予想より強い需要の中で鉄鉱石の在庫積み増しに動いているため、価格は再び上昇して昨日は過去8ヶ月の高値140.75ドルに達した。このような動きを受けて世界第4位の鉄鉱石生産大手のフォーテスキュー・メタル・グループが90億豪ドルの投資を行なって生産能力を3倍に引き上げる計画を再開する、というのが記事の概要だ。
中国のインフラ投資が盛んだった時は「コモディティ・ス-パー・サイクル」という言葉が流行った。中国など新興国のインフラ投資が鉄鉱石等コモディティの価格を長期的に上昇させ、資源国が潤うという理屈だ。だが中国の景気が減速して、鉄鉱石の価格が下落してくると、気の早い人は「コモディティ・スーパー・サイクル」は終わったのじゃないか?と言い始めた。
世界の鉄鉱石の半分以上を食っている中国の鉄鋼需要が鉄鉱石の価格に影響を与えるのはまぎれもない事実だが、鉄鉱石の価格を更に大きく動かしているのは、原材料を先買いする鉄鋼メーカーの動きなのだろう。これは一種のレバレッジのようなものだ。
長期的にみると中国など新興国の鉄鉱石需要は強いとしても、個別の投資はその時々の景気により増減する。景気上昇が予測されると鉄鉱石の価格は敏感に上昇し、悪化が予測されると先行指標的に価格は下落する。
という考え方が正しければ、コモディティ・スーパー・サイクルは終わったのではなく、一休みしていただけで再びサイクルが回りだしたという判断が成り立つ。
もし安倍政権にツキがあれば、コモディティ・スーパー・サイクルの波が円安と相まって、日本の物価上昇を支援するだろう。もっともそのことが日本の消費者にプラスなのかマイナスなのかは別の話であるが。