FTによると昨日(1月21日)ドイツ連銀のワイドマン総裁はフランクフルトでの演説で、世界中の中央銀行で独立性が侵害されており、貨幣価値の切り下げによる通貨戦争が起こるリスクがあると懸念を表明した。
そしてハンガリーや日本で新政権が政府が中央銀行の管轄事項にまで踏み込み、中央銀行の自治権を終わらせようと脅迫していると警告した。
それが意図的なものであれ非意図的なものであれ、一つの結果として為替レートの政治問題化につながる可能性が高いと同総裁が警告する。
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ワイドマン総裁の懸念は正しい、と私は思っている。ただし演説の中でワイドマン総裁が述べていたような中央銀行が独立性を保ちながら、低インフレが持続した1980年代や90年代のような大平穏期great moderationには中々戻らないような気がする。
その大きな要因の一つは中国など発展途上国の影響だ。発展途上国は安価な労働力を提供することで先進国の一部の仕事を侵食し、旺盛な資源・エネルギー需要で資源価格に上昇圧力を加えている。先進国がこれらの問題に対処するには、中央銀行のマンデートを拡大する必要があった。例えば米連銀は物価安定と完全雇用の達成をマンデートとしている。
だが大規模な金融資産の購入を伴う積極的な金融政策はかなりの劇薬。名医が限定的に使えば劇薬は効果的だが、使い方を誤ると体を壊してしまう。通貨価値の腐食もその弊害の一例である。