今朝(1月6日)読んだニューヨーク・タイムズの記事の中で興味をひいたのがアメリカの天然ガスの話だ。
記事によると5年前に建設が開始された天然ガス輸入ターミナルをコンクリートが乾く前からガスの輸出ターミナルに転換しようとする動きがでている。
記事によると米国の天然ガス価格は千立方フィート当たり3.3ドルで、欧州では10ドルから11ドル、アジアでは15ドル以上となっている。
アジアの中で大きな天然ガス需要を持つ日本のガス価格は天然ガスの石油代替性という性格からして、原油価格にリンクしてきた。
一方米国では多くの取引ポイントでの需給により価格が形成されているので、昨今のシェールガスブームで天然ガスの供給が増え、価格が下落している。
US Energy Information Administration の資料を見ると、2000年1月に千立方フィート当たり2.60ドルだった源泉価格は、06年1月には8.01ドルに上昇し、2012年には2.89ドルに下落している。
ガス価格の高騰時に輸入ターミナル建設を急いだ資源会社が今度は余剰ガスの輸出を試みるという技術革新に振り回された一例だ。
シェールガス採掘を可能にした中核技術が「水圧破砕法」と「水平ドリリング」で、米国が先行している。シェールガス採掘は環境保護上の問題、水資源問題や政治上の制約等で欧州、南米等では開発が遅れている。また米国よりもシェールガスの埋蔵量が多いと言われている中国も開発を計画中である。
ちなみに地層が若い日本ではシェールガスの商業的生産は期待できないと言われている。
タイムズは「もし米国で天然ガス輸出ターミナルが明日完成して即輸出ができるのであれば米国は完全な市場機会を持つがそうは行かないだろう」というアナリストの見方を紹介している。輸出増、石炭発電所から天然ガス発電所への転換、車のガソリン車からNLG車への転換が進み天然ガス価格は早晩上昇するというのがアナリストの見方だ。またシェールガスを原材料に使う化学会社等の輸出規制圧力も強い。
また長期的には米国で開発されたシェールガス採掘技術が世界に広がり、世界的にシェールガスの供給が増えると米国の輸出競争力は低下するので輸出ターミナル転換プロジェクトが許認可やファイナンスを得ることは簡単ではなさそうだ。
ある資源会社の幹部は向こう5年の間に米国は国内消費量の2%に相当する10-20億立方フィート(1日当たり)の輸出が可能になり、10年以内に30-50億立方フィート(1日当たり)の輸出が可能になるのではないか?という見方を示していた。
さて日本との関連で考えてみると、シェールガスの商業採掘が期待できない日本では、米国からの天然ガス輸入の長期契約を結ぶことを急ぐべきだろう(大阪ガス・中部電力は既に結んだという話)。
TPPや貿易の自由化というと「日本の農業はどうなる?」という声が一部の人から上がるが、農産物が多少あったところで、熱源がないとご飯も炊けないので食事をすることはできない。
シェールガスの輸出に慎重な姿勢を示す米国にプレッシャーをかけるためにもTPP参加へ前向き姿勢を示すことは良いかもしれない。