金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

多少気になるNHKの冬山番組

2013年01月26日 | 

昨日(1月25日)夜7時30分からNHK首都圏スペシャルで「雪山へGO 2013-達人と楽しむ冬の名峰」という番組を見た。山好きの方の中には「観た、観た」と仰る人や「ビデオに撮って週末に観る」という人も多いのではないだろうか?(もし私の親しい知人の方で「見損ねた、撮り損ねた」という人がいて是非観たい!というのであればDVDをお送りしますから連絡してください)

映像がきれいな良い番組でケチをつけるつもりはないが、少し気になる点がある。それは「冬の北横岳」と「冬に西穂高岳(登ったのは独標までだが)」を同じ番組内で並べてさらりと紹介していることだ。

この二つの冬山を歩いたことがある私としては、この点に少し違和感を感じている。簡単に言うと北横岳は「装備(ウエアと4本詰めアイゼン)があれば誰でも登ることができる冬山」だが西穂高は「完全な冬山装備(冬山専用靴、10-12本爪アイゼン、ピッケル、ハーネス、ザイル等)とピッケル・ザイルワークが必要な山」であり、その差は大きいということだ。

夏山ルートしても西穂高の稜線は一般コースのかなり上位に位置する。八ヶ岳などと較べると鎖や梯子など人工物が少なく、しっかりしたルートファインディングや三点支持を求められるところがある。だが一般ルートであることには変わりなく岩登りの特殊技術は必要がない。その意味では「夏の北横岳登山」と「夏の西穂高登山」の間には、量的な困難さの違いはあっても、質的な困難さの違いはない、ということができるだろう。つまり普通の人が何回か普通の山登りを重ねていけば、夏の西穂高は登ることができる山なのだ。

しかし「冬の北横岳登山」と「冬の西穂高岳登山」の間には質的な困難さの違いがある。はっきりとした技術断層があるのだ。その技術断層は、アイゼン・ピッケルワークとザイルワークである。

テレビではモデルのKikiさんを近藤ガイドがリードし、最後はアンザイレン(ローブで体を結び合って)して独標に登っていた。ガイドの完全なリードがあるので、Kikiさんにはロープワークの負担はなかったと思うが、一般的にはロープを結び合った継続登攀はかなり高度な技術だ。つまり万一パートナーが滑落した場合、確実に止めるには相当な熟練を要するからだ。

★   ★   ★

私はテレビを観て、冬の北横岳に登った人の内何人かは西穂高岳に向かって歩き始めるのではないか?と少し懸念を持っている。番組は明示的に教えなかったが二つの山の間には明確な技術断層がある。

実は7年ほど前初冬の西穂を目指したことがあったが、新雪が安定していなかったので独標の一つ先のピラミッドピークで引き返したことがあった。http://blog.goo.ne.jp/sawanoshijin/d/20051105

その時も何ヶ所かザイルを使って慎重に上り下りしたことを今でも思い出す。

十分な冬山経験がない人あるいは「昔とった杵柄」という人で冬の西穂にトライしたいという人がいれば私はガイドさんを使うことを強くすすめたい。

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ファーガソン教授、日本の円安政策に理解を示す

2013年01月26日 | 金融

ハーバード大学の歴史学者ニアール・ファーガソン教授が、最近の安倍政権主導の円安政策を擁護すると読める寄稿をFTに寄せていた。

日本の円安政策についてはドイツ連銀のウィードマン総裁が為替戦争を引き起こすと警鐘を鳴らすと、甘利経済産業大臣が「ドイツはユーロという域内単一通貨のメリットを輸出を通じて最大に享受している。彼は批判する立場ではない」と反論するなど応酬が続いている。

ファーガソン教授は4つの点から日本の立場を援護するような意見を述べていた。

第1は為替をめぐる争いの歴史は古く今に始まった話ではない。例えば大恐慌後英国は金本位制を廃止し、金融政策を国内需要に焦点をあてたものとした。これは各国の平価切下げ競争を招いたが、英国は金利を下げたことで住宅市場を回復させ景気回復に結びつけた。もう少し近い所では米国のいわゆるニクソンショックがある。

第2の論点は「日本は1980年代の終わり頃から静止状態にある。円ベースの名目GDPは20年前と変わらず、公的債務は持続不可能なほどに大きく、人口動態は世界最悪。だから少し大目に見てやれ」というもの。

第3の論点は「日銀の新たな金融緩和政策は規模の上では、米連銀の緩和策に較べると小さい」というものだ。日銀が2014年度に購入するのは満期が近い国債が中心で純増額は10兆円、GDPの約2%だ。

一方米連銀はリーマンショック以降もっと積極的な金融緩和策を取り、先週連銀のバランスシートは史上初めて3兆ドルを超えた。もし連銀がこの勢いで今年中資産購入を続けるとその額はGDPの6-7%に相当する1兆ドルに達すると同教授はいう。

最後の論点は短期的な為替の動きだけでなく、長期的な動きや実質実効為替レートに注目するべきだと同教授は述べる。

実質実効為替レートについてはBISや日銀などが計算を行なっている。計算主体により若干の違いはあるが、傾向はほぼ同じだ。円は1994年に最高値をつけた後(ドル円レートでは95年4月に79.75円をつけた)、デフレ効果で実効為替レートは低下を続け、2007年には94年比3分の2程度まで下がった。リーマン・ショック後11年10月まで実行為替レートが27%上昇するという急速な円高が進んだ。最近の日本の政策はこの急速な円高を是正しようとするものに過ぎない、と同教授は述べる。

ついでにいうと過去5年半の間で活発な為替戦争を行ったのは韓国と英国だった。韓国ウォンの実効為替レートは07年8月以降19%下落し、ポンドは17%下落した。

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