一ヶ月半ほど前「室町山の会」(私たちの山の会の名前)の夏山登山は五竜岳と決まった。「室町山の会」は元の会社の同僚を中心とした山仲間の会で、ビッグイベントとして毎夏日本アルプスの高峰を一つ登ることにしている。一昨年は穂高、昨年は剣岳に登ったので、深田百名山中の困難な山を上の方から登っていることになる。仲間がだんだん年を取るということを考えれば、難しい山から登るという選択もありだろう。そして今年は百名山の中から比較的アプローチが良くかつ少し歯ごたえがありそうな五竜岳をターゲットにした次第。
遠くから後立山連峰を眺めると、鹿島槍ヶ岳の秀麗な双耳峰や雪を冠った白馬三山をidentifyすることができ、その間にある比較的黒々とした山を「ああ、あれが五竜岳だな」と認識する。五竜岳は大きいが地味な山である。
深田久弥の日本百名山は次のように書いている。「北安曇から後立山連峰を眺めると、高さは特別ではないが、山容雄偉、岩稜峻れい、根張りのどっしりした山が眼につく。それこそ大地から生えたようにガッチリしていて、ビクとも動かないといった感じである。これが五竜岳だ。」
さて我々の登山に話を戻すと、7月26日(金曜日)新宿を午前11時に出発するあずさ特急で松本へ、松本からローカル線に乗り換えて、神城駅に午後3時45分ごろ到着。
神城ではセジュールミントというプチホテルに宿泊。
インターネットで見つけて初めて泊った宿だが、料理、部屋の作り、サービスなど中々良かったと感じた。旅行サイトなどで評判を見ると「オーナーのホスピタリティが低い」といった評価を見ることがある。たしかに一見すると奥さんからは冷たい印象を受けるが、少し話をすると気持ちの良い人だということが分かるので、私の評価ではホスピタリティは悪くないと思うのだが・・・・。
さて7月27日(土曜日)。午前中は曇りだが午後は雨という天気予報。午前7時過ぎにテレキャビンに乗って標高1,500mのアルプス平に向かった。さらに登山リフトを使って地蔵の頭の下まで登った。
7時50分登山開始
9時小遠見山(2007m)到着(5分休憩) 小遠見山は晴れていれば360度の展望が楽しめるところで、 アルプス平からここを往復するハイカーも多い。残念ながらこの日は雲が厚く、眺望は良くなかったが時々鹿島槍の一部が見え隠れした。
中遠見山に向かう途中鹿島槍が見えたので写真を1枚。
10時8分 大遠見山
西遠見山に向かう途中、雲が少し切れてシラダケ沢の上部が見えた。目指す五竜小屋は雪渓の上のコルにある。
稜線上に小さな残雪があった。残雪に備えてピッケルを持ってきたがこれでは使うこともなく無用の長物に終わった。
10時55分 西遠見山到着。昼飯とする。
西遠見山(標高2268m)から白岳(2541m)の登りはこの日一番のチャレンジだ。
11時20分雲が切れて五竜岳が見えた。ピークは写真中央の雪渓の左だ。雪渓は「B沢」と呼ばれている。その右のピークがG2だ。
白岳の急登が始まる手前で五竜山荘がはっきり見えた。山スキーで滑ると面白そうな斜面だ。小屋に到着した後、山岳警備隊の人から話を聞いたところでは、五竜小屋から白岳(右のピーク)の下をトラバースして右手の残雪をたどって遠見尾根にでるルートは簡単なようだ。シラダケ沢を真っすぐ滑るルートは雪の状態次第だろう。
12時15分 鎖場を登る。鎖を頼るほどの岩場ではないが、濡れた時の下降は要注意だ。
13時五竜小屋到着(標高約2,500m)。当初の計画では天気が良ければ、五竜岳まで往復する予定だったが、チェックインを済ませたころ雨が降り始めたので、中止とする。
五竜小屋は300名を収容する小屋だが、この日ははかなり宿泊客が多く四畳半の部屋に我々全員8名が詰め込まれるという混雑ぶりだった。
あけて7月28日(日曜日)。午前4時28分。ヘッドランプを付けて五竜岳を目指して出発。午前5時28分頂上。霧雨で眺望はなくすぐ下山。五竜岳頂上下の鎖場では離合待ちでちょっと渋滞する。なおこの少し前鎖場から中年女性が滑落し、心肺機能停止となる事故があった、と少し後で聞いた。風に飛ばされそうになった雨具を追いかけて滑ったのではないか?という噂も流れていた。ただし現時点ではネットで検索しても事故のニュースは見ることができなかった。週末は山口県などの集中豪雨がビッグニュースだったから埋もれてしまったのだろうか?
午前6時30分小屋に戻り、朝飯(昨夜小屋で貰ったお弁当)を食べて、7時30分遠見尾根を下山することにして雨具に身を固めて小屋を出発(当初予定では唐松小屋から八方尾根を降る予定だった)。
8時38分 西遠見山。滑りやすく危険な岩場は無事通過することができた。ここから先は比較的なだらかな長い尾根がアルプス平まで続く。雨は完全に上がったが、標高2300m以上は雲の中だ。
9時17分 大遠見山
11時8分 先着隊がアルプス平到着。テレキャビン下から白馬駅までのタクシーを無線で予約して後続隊の到着を待った。
11時55分 最後の2名がキャビン駅に到着。白馬で日帰り温泉に入り、14時38分のあずさ26号で帰京した。
五竜岳は中々大きな山であった。そして山の危険はすぐ目の前にあるということを教えてくれた重たい山でもあった。