贅沢な人間ではない。日頃着る服はLands’endという米国発の通販のものが多い。ユニクロなどよりは少し高いがある種の哲学があるので飽きが来ない。
Lands' endの服は作りがしっかりしている上にファッション性がないので何年も着ている。およそ流行に無頓着な私向きの服である。
かようにおよそ贅沢とは無縁だが、靴だけは他の人より沢山持っていると思う。ビジネス用、日常用、ジョギング用、スポーツクラブ用、登山靴は冬山用・スリーシーズン用・トレッキング用と三種類。更に滅多に履かないけれど沢登り用のフエルト靴がある。他にスキー靴が二種類。スキーといえば雪道を歩く短靴が一足と膝までの長さのヘビーデューティーなゴム靴がある。
会社の入って間もない頃はビジネスシューズを何足もそろえることができず、1,2足を履きまわしていたので、直ぐ駄目になってしまった。山陰地方のお客さんを雪のシーズンに回っていたことも靴を傷めた原因だ。
数足のビジネスシューズを揃え、一足一足を十分休ませることができるようになった頃から外回りが減ってデスクワークが多くなり、靴はほとんど痛まなくなった。
今となってはあまり履く機会が少なくなったビジネスシューズが何足か下駄箱の棚を占拠している。若い頃の恨みを今頃晴らしているのかもしれない。
登山靴の中でも冬山用の靴はほとんど履かなくなった。冬山を歩くことはあるが、今のスリーシーズン靴は高性能なのでほとんどそれで間に合ってしまう。
今山登りで一番よく使っているのは、トレッキング用の底が柔らかいゴアッテクスの靴だ。歩きやすいけれど、実は顔が今一つ気に入らない。
つま先が丸く広がり間が抜けた感じがするからだ。この靴は日本製なので日本人の足には合うのだが、きりっとした感じがしない。
登山中に見るともなく他人の靴を見ると、細身できっりとした顔の靴を見かけることがある。どうも欧州メーカーの靴のようだ。
新年を機会に新しいトレッキングブーツを買おうかな、と考えている。履き心地が許せば、細身で顔の良いきりっとしたブーツを買ってみたいと思う。
「ふらんすはあまりに遠し せめて新しき背広をきてきままなる旅にいでてみん」と詠んだのは朔太郎。
ブーツを新調してもヒマラヤの高峰に登ることはできないが、チベットの香り高いムスタンあたりに旅してみたいなどと考えている。
靴は時として人生にささやかな贅沢をもたらしてくれる。