WSJによるとイエレン連銀議長は昨日(12月19日)バルティモア大学の卒業式でスピーチを行った。話の骨子は「グローバリゼーションと技術革新が進展する中で、経済がどの程度の速度で加速するのか?どのような新しい技術が登場するのか?雇用がどのような速度で持続的に拡大するのか?は分からない。よりはっきりしていることは成功は引き続き教育と結びついているということだ。教育は変化する経済への適応力を高めるからだ」ということだった。
米国では大学での教育コストがウナギ登り(原文はskyroketsing)で、奨学金ローンの残高は1兆28百億ドルに達し、自動車ローンやクレジットカード債務残高を上回っている(ニューヨーク連銀)。
そんなに高い学費を払って大学を卒業する必要があるのか?という声も聞かれるが、ニューヨーク連銀のレポートによると経済面で大卒のメリットは大きい。
過去40年間の傾向として大卒者の生涯賃金は高卒者より56%高い。また失業率でみると11月の大卒者の失業率は2.3%で高卒は4.9%だった。
またイエレン議長は大卒の無形資産価値として「より幸せでより健康でより長生きできる」ことに言及した。
教育水準と長生きの関係について少しネットで調べてみるとシラキュース大学の助教授のレポートが見つかった。http://www.populationassociation.org/wp-content/uploads/Dr.-Jennifer-Montez.pdf
それによると30歳時点における大卒レベルの余命は50歳弱で中卒レベルの余命より6.7年長い(高卒者はその間)。さらに健康寿命(余命)という点では大卒レベルが中卒レベルより10.8年長いことがグラフで示されていた。
イエレン議長のスピーチとは離れるが、なぜ高等教育を受けた人の方がそれ以外の人より余命特に健康余命が長いか?ということを推測してみた。
主な要因は「大卒者の方が稼ぎが多く、医療や健康にお金を使う余地が大きい」「健康や医療に関する情報が豊富でより健康志向が高い」「社会的なネットワークが大きく、生き甲斐などライフワークを見つけやすい」などということだろう。
イエレン議長は大学教育の重要性を指摘する一方、大学教育を受けていない人間がグローバリゼーションにどのように対応していくのかということについて懸念を示した。議長は「初等・中等教育の改善で大学への進学機会を高める」とともに「大学教育を受けていない総てのアメリカ人に経済的機会を広げる方法を見出さなければならない」と述べた。
日本では住民税非課税世帯を対象に月2~4万円の給付型奨学金(つまり返済なし)を交付する制度が来年度から先行実施される(2018年度から本格実施)というニュースが流れていた。
社会保障費が拡大する中で予算捻出は大変だが、私はこのような制度は充実させるべきだと考えている。
少子化で労働力の減少が確実な日本で経済力を維持し将来の税収や社会保障費負担を確保していくには、より生産性の高い仕事に労働力をシフトする仕組みが必要だからだ。その仕組みの根幹は高等教育にある。小林虎三郎の米百俵の話を思い出してみてはどうだろうか?