外交はすべて駆引きであり、駆引きを左右するのはレバレッジ(交渉材料)有無・強弱・使い方の巧拙である。
相手国の善意や誠実さなどには過度の期待を抱かない方がよい。
特に相手がロシアの場合はそうだ。ロシアは北方領土問題の交渉の起点を1956年の日ソ共同宣言に置くとしている。そして共同宣言では平和条約締結後歯舞・色丹島は日本に引き渡すが主権を引き渡すとは書いていないというのがプーチン大統領の主張だということが今回明らかになった。
冒頭外交は駆引きであり、誠実さに過度の期待を抱いてはいけないと書いたが特に相手がロシアの場合はそうだ。
北方問題の根幹は1945年8月太平洋戦争の最終段階でソ連がその時点で有効だった日ソ不可侵条約を一方的に侵犯して日本に侵攻したことにある。太平洋戦争は重層的な戦争なので、その責任の所在を一元的に述べることはできないが、こと日ソの問題に関する限り「平和に対する罪」を犯したのはロシアであり、北方領土に対するロシアの主権主張には正当性は全くない。
もっとも外交の世界は力をベースにした交渉の世界であり、正当性の有無が決め手になるとは限らない。しかし交渉を後押しするのは、国民の政府に対する理解と信任である。プーチン相手に70年前の話(ソ連の一方的な不可侵条約破棄)を持ち出すことが得策かどうかは知らないが、ロシアという国は平気で約束を破る国だということは理解しておくべきである。政府のそのような理解を持っていると国民が確信すると国の力が高まるのだが。