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老後資金に対する自信度、米国78%VS日本28%

2017年06月11日 | ライフプランニングファイル

ギャラップ調査を見ていると、US Investors more confident about retirement finance(米国の投資家は老後資金により自信を持っている)という記事がでていた。

これはウエルスファーゴ・ギャラップが今年2月に債券・株式・投資信託に1万ドル以上投資している(個人)投資家1,007名に電話による調査を行った結果に基づいている。

それによると、老後資金に対する自信度は2年半前(2014年8月)69%から9%上昇している。

日本でも似たような調査結果はある。日本FP協会が2016年11月に発表した「老後とお金に関する調査」によると、貯蓄残高が900万円以上ある世帯で「老後資金に不安はない」と回答した人は28.8%だった。

日本の家計で有価証券の金融資産に占める割合は18%だから、貯蓄残高900万円以上の世帯は平均的には160万円程度有価証券を保有していると推定される。

つまりこの階層はギャラップ調査の「投資家」層とほぼ同じと考えてよいだろう。

「老後資金に対する自信度」という質問方法にも違いはある。ギャラップは「老後も現在のライフスタイルを維持する自信は?」という聞き方で、日本FP協会は「あなたは、ご自身の老後の生活資金についてどのように思いますか?」と聞いている。「自信は?」というポジティブな質問をする方がポジティブな回答が返ってくる可能性が高いかもしれない。

そのような問題を含みながらも、日米の老後資金に対する自信度の違いの大きさには驚きを禁じ得ない。

退職した世代について、米国では87%が「ライフスタイルを維持する自信がある」と述べたのに対し、日本では70代以上の人の31.5%が「老後の生活資金に不安はない」と述べるにとどまっている。「どちらかといえば不安に思う」人は45.5%で「不安に思う」人は23%だ。

では老後資金に関する日米の自信度の違いはどこからきているのだろうか?

以下は私の推論である。

第一に国民性の違いがある。全般的に米国人は楽天的で日本人は将来を不安視する傾向がある(あるいは楽観的に考えることに周囲の眼を含めて抵抗がある)と私は考えている。

日本人の70代以上の人の最大の不安材料は「老後の医療費や介護費がいくらかかるか分からない」ということだ。高齢者になると医療費は高くなる傾向があるが、高額医療費制度により個人負担はかなり抑えられている(所得により個人負担額はかなり変わるが)。ところが医療保険を販売する保険会社がこの制度ことを詳しく説明せずに、医療費が高くなることを喧伝する結果、消費者の間に医療費に対する漠然とした不安感が高まっているのではないだろうか、と私は考えている。

また投資信託等の金融商品の販売を促進する業者側も老後資金不足を売込み材料としているため、消費者が不安を募らせている可能性がある。

第二に投資環境の違いである。最近ようやく日本株も世界的な株高にキャッチアップし、日経平均は2万円台に乗ってきたが、日米では株式市場に対する消費者の信頼度にはかなり差がある。また景気自体は日米とも堅調であるが、消費者レベルでの景気に対する実感度には差があると考えている。

第三は2つの世論調査の間の設問方法の違いによるだろう。

第四は日本人の平均好きに原因があるかもしれない。各種の調査によると夫婦二人の老後資金は月25万円程度と言われているがこれはあくまでも平均に過ぎない。生活費はライフスタイルにより異なる。退職後に生活費を減らした結果、ライフスタイルが大きく変わると、欲求不満が高まる可能性が高い。大事なことは「老後もライフスタイルを維持する」ことなのだ。

そのためには現役世代から「お金をあまりかけなくても満足を得られるような暮らし方」を築いていくことも必要だ。

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以上のことを整理して、老後資金に対する不安を減少する方法を考えてみよう。

まず「高額医療費(補助)制度」など公的補助制度の理解を深め、病気になった時の医療費負担に対する不安材料を少なくすることである。

巷間金融機関や専門家と言われる人の間では「ホラーストーリー」(これをしないととんでもないことになるというストーリー)に基づく、商品セールスが行われているが、ストーリーを鵜呑みにしないことである。

次に平均を気にせず「自分のライフスタイルを維持する」ことを考えるべきである。

次に自分でライフプランを作ってみることである。個々人はライフスタイルが異なり、住環境も異なる。自宅改修のために大きな資金が必要な場合もある。手作りのライフプランニングを行うことで漠然とした不安を具体的な問題としてとらえることが可能になる。

最後に自分でできることは自分でするという姿勢を保つことである。「ただで相談に乗ります」「サービスで手続きを行います」といった類の話は高くつく場合が多い。手間はかかるが色々な問題を自分で少しづつ解決していくという姿勢を維持することが、不安の削減につながると私は考えている。

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私が書いた参考図書

インフレ時代の人生設計術

 

 

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