3日ほど前ブルンバーグが「三菱UFJグループが今後10年程度で過去最大となる1万人規模の人員削減を検討していることが分かった」と報じていた。
削減する1万人の中には昨年平野社長が発表した傘下銀行での採用抑制や自然退職による人員減3,500人も含まれているという。
1万人と3,500人の差の6,500人についてどうするのかは明らかにされていないが、早期退職制度等を導入すると推測される。
もし早期退職制度を導入するのであれば、早めに導入して、少し多い位の早期退職者を出す方が良いのではないか?と私は考えている。
その理由は幾つかある。
まず銀行業の将来という点から考えてみよう。
第一に日本の銀行は銀行数・店舗数・従業員数とも総て多過ぎる。IT時代に対応してないという以前に人員面で昔の預金吸収・貸出型のビジネスモデルから脱却できていないところが多いと私は考えている。
それは従業員の数の問題だけではない。新しい金融モデルに対応する従業員の教育・養成プログラムや人事制度に問題があるのだ。
例えば今後銀行が生き残ることができる分野の一つに「資産運用部門」を上げることができるが、資産運用部門で求められる人材・スキルは預金吸収・貸出型と全く違う。これを同じ人事システムで処遇しようとすると資産運用部門の優秀な人材は退職し、外資系の資産運用会社に移籍する可能性が高い。
つまり銀行は総人員を減らすだけでなく、専門分野で活躍する人材を長期的に育成・確保する必要があるのだ。そのためには人事制度の改革と大胆な人減らしが必要なのである。
次にフィンテックと銀行という観点で考えてみよう。
フィンテックという概念は広くて分かり難いが現時点での代表的な例は「ビットコイン」に代表される仮想通貨と「オープンAPI」だろう。APIはApplication Programming Interfaceの略で「自己のソフトウエアの一部を公開して、他社のソフトウエアと共有することができるようにする」仕組みのことだ。
三菱UFJファイナンシャルグループ(MUFG)は今年3月にMUFG{APIs}プログラムの説明会を行っている。将来的にはMUFGと提携する先がそのプラットフォームから、銀行取引内容の照会や送金などの取引を行うことが可能になりそうだ。
仮想通貨についてはMUFGは独自の「MUFGコイン」を発行する予定を立てている。
このようにフィンテック分野でMUFGは日本の先端を走っていると私は考えている。だがフィンテックが進むということは、店舗を介在した金融取引が不要(少なくとも大幅削減)になることを意味する。
つまりMUFGがフィンテックを推し進めれば、自らの店舗や従業員が余剰になってくることを意味するのだ。
その次に預金者(消費者)目線で銀行を考えてみよう。私は賢い預金者(消費者)になるには、いかに銀行の窓口に行かないで用事を済ますか?ということを考えるのが一番だと思っている。簡単にいうと窓口で送金を依頼するよりは、ATMで送金をする方が手数料は安いし、インターネットバンキングを利用する方が更に安い。将来的には仮想通貨を使うともっと手数料が安くなる可能性もあるだろう。
つまり大部分の預金者(消費者)にとって銀行窓口は高コストチャネルなので、できれば避けるべき場所なのだ。
最後にMUFGの従業員の立場から早期退職を考えてみよう。
これからの社会は元気な人は70歳くらいまで働くことが期待される社会になる。70歳くらいまで働くとすれば、第二の職場に移るのは早い方が良い。
最近ある不動産会社の社長と話をしたところ「ホテル業界はマネージャー不足で新しいホテルの建築に二の足を踏んでいるところがある」という話だった。これは一例だが色々な方面で人手不足の話は聞く。人手不足が経済成長のボトルネックになる可能性は高い。
長期的にみれば銀行の人員余剰感は拡大こそすれ、減ることはないと思う。レッドオーシャンの中で椅子取り合戦に汲々とするよりは、ブルーオーシャンに飛び出して、腕を振るう場を探しては如何だろうか?
天下国家論的にいうと、元気の良い優秀な人材が銀行界から別の分野に供給されることで、日本の経済は活性化する。
天下のMUFGであれば、日本経済の活性化という視点で優秀な人材を気持ちよく送り出すパッケージを作る度量があっても良いと私は思っている。