金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

膠着状態のマーケット、証券会社から不吉な電話が?

2017年06月22日 | 投資

世界の株式相場は膠着していると私は見ている。

少し前はハイテク銘柄が売り込まれるという一幕があったが、アマゾンのホールフーズ買収などでナスダックも少し持ち直した。一方ダウは伸び悩んでいる。今の米国株の動きは、セクター間の調整のような動きだ。

ボラティティは歴史的に低い水準にとどまっている。政治も微妙なバランスを保っている。米国ではジョージア州の下院補欠選挙で共和党が苦しい選挙戦を制した。トランプ大統領も妙におとなしい。

しかし政治的安定は微妙だ。日本では安倍政権がかってないほど、揺れている。何かのはずみでバランスが崩れる可能性はある。

そんな中夕方多少取引のある某大手証券会社から「インド株投信を買いませんか?」という電話がかかってきた。

話の内容はともかく私は証券会社からのセールス電話は「相場の下落を示唆するカナリアの声」だと以前から思っている私はある種の不安感を感じた。

カナリアの声というのは、昔炭鉱夫たちがカナリアをもって炭鉱に入ったことに由来する。カナリアは人間より早く有毒ガスを感知して鳴き声を止めたというから、有毒ガス検知器だったのだ。

過去の経験からいうと、証券会社は相場の底や昇り基調の早い段階でセールスの電話をかけてくることはまずない。

証券会社が電話をかけてくるのは、相場が膠着状態にあるときや天井を付けた時だ。

新しい投資信託もこの時期にローンチされる可能性が多い。

しかしこのような時期は本当は買いのタイミングではなく、様子見かさらにいうと売りのタイミングであることが多い。

様子見の人が多いと日銭を稼げないので、証券会社はお客さんにセールス攻勢をかけるのである。

果たして証券会社の電話セールスが、相場変動のカナリアであるかどうかは分からないが、その後ろくなことがなかったという過去の経験からすると、しばらく警戒レベルを上げた方が良いのではないか?というある種の不安感を覚えたのであった。杞憂に終わればよいが・・

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詐欺より怖い「詐欺的」なもの

2017年06月22日 | ライフプランニングファイル

自宅にいる限り、必ずと言ってよいほど見るテレビ番組がある。それはNHKの首都圏ニュースだ。より正確に言うと首都圏ニュースの中で午後6時40分頃から合原アナウンサーが司会する「ストップ詐欺被害!私は騙されない」である。私は秘かな(笑い)合原明子アナウンサーのファンで、この短いコーナーを楽しみにしている。高齢者を相手とした詐欺問題に特別関心があった訳ではないが、ストップ詐欺被害を見続けていると、毎日のように合原さんが警告を発しているのに、同じような詐欺被害が繰り返されるので少々唖然としている。

実際ワイフの友達の中にも振り込め詐欺電話がかかってきた人は何人かいると聞く。幸いなことに実害は今のところないようだが。

またかなり前の話だが、私の後輩でちゃんとした判断力のある当時50代の男性でもあわや!という状況に陥ったことがあると聞く。振り込め詐欺は他人事と侮ってはいけないと思う。

だが私は本当に恐ろしくそして潜在的な被害額が大きいのは、「詐欺」そのものよりも「詐欺的」なものではないか?と考えている。

刑法246条が規定する「詐欺罪」には明確な要件がある。それは「欺罔」(事実や評価に関して人の判断に誤りを生じさせる行為)「錯誤」(欺罔によって被害者が内心で思っていることと異なる意思表示を行い、本人がそれに気づいていないこと)「交付」(錯誤に基づいて、被害者が財産を自分の意志で相手に交付すること)「財産の移転」(被害者から相手に財産が移ることで詐欺罪は既遂になる)の4要件だ。

では「詐欺的」ものとは何か?

一般的な定義があるかないかは知らないが、私は「詐欺罪の要件の一部は欠ける(ないしは立証が困難)が、相手方の行為により本当に望んでいることと違う意思表示等を行い、財産の交付を含む様々な行為を行う」ことと考えている。

例えば「誇大広告」というのはその一例である。「これを飲んだら10㎏やせた」という類だ。このような広告は「不当表示防止法」違反に問われる可能性はあるが直ちに詐欺罪にはならない。何故ならそれによる財産移転による被害額がはっきりしないからだ。

民間の医療保険のセールスの中にも、病気になった時に必要な医療費について消費者に過大なイメージを与えて、必要以上の高額保険を販売する手口がある。これも直ちに詐欺という訳ではないが。

老後の必要資金を過大に想像させることで、リスクの高い運用商品を販売する手口もある。

相続税に対する忌避感を煽って、必要以上更には有害な相続対策(たとえば将来人口減が見込まれる地域でアパート建設を勧めるなど)をセールスする手法も目にするところだ。

概ねこのような商法は「ホラー(恐怖)ストーリー」という手法を使っている。「ホラーストリー」というのは、「〇〇をしていないとこんな悪い状況を招く」という恐怖心を煽る手法なのだ。

「ホラーストーリー」の反対の手法は「サクセスストーリー」で「〇〇をするとこんなに成功する」という射幸心を煽る手法だ。「こんな株を買うと大儲けができる」といった類の手法だ。

「詐欺的」手法の中には「サクセスストーリー」型と「ホラーストーリー」型があるが、成功率は「ホラー型」の方が高いようだ。

これは大部分の人間が成功に対する欲求より破綻に対する懸念の方が大きいからなのだろう。特に高齢者になるとリスク回避傾向が高まるから、ホラーストーリーにはまりやすくなるのだろう。

「詐欺的」手法は政治にも用いられる。地下水汚染リスクなどを実害の可能性を超えて喧伝するのも、私は「ホラーストーリー」型の政治手法ではないか?と考えている。

「ホラーストーリー」を回避するのは難しい。何故なら「最悪の事態が起きる可能性を判断する」ことが難しいからである。また「最悪の事態」の中には「原発事故」のように、発生確率は低くても万一発生するとカタストロフィック(破滅的)で絶対に避けなければならないものがある。何が許容できる(またはすべき)リスクで、何が絶対に回避すべきリスクなのか?ということは判断が難しい。

我々は様々なリスク(不確実性)の中で生きている。自分で身を守ろうとしていても、昏睡した人が運転する車が飛び込んでくることもある。ある種のリスクは確率的に分布していて、避けようがない。

世の中に蔓延している「詐欺的」なものを避けるには、「ホラーストーリー」の裏にある「リスク」を正確に判断できるかどうかにかかっている。完全にリスクを回避して生きることは不可能だ。仮に完全にリスクを回避しようとするとそのコストは膨大になる(でも回避できない)。交通事故にあうのを避けたければ、自宅にこもり続けるしかないが、そのコスト(外に出て楽しむなどという「機会コスト」を含めて)は膨大だ(それでも飛行機が墜落してくることもあるのでゼロにはできない)。

「詐欺的なもの」は「詐欺」と違い、財産的被害額の立証が極めて難しい。またそもそも被害者が被害を認識していないことも多い。いやその方が圧倒的なのだろう。だからこの問題は解決が難しい。

解決が難しい話は夕食時のテレビ番組にはふさわしくないから、茶の間の話題には上がらない。だが私は「振り込め詐欺」被害額より「詐欺的」なものの被害額の方がはるかに大きいのではないか?と推測している。

 

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