今日(2月21日)日経アジアンレビューにShrinking to survive: Japan's banks face a quiet crisisという記事が出ていた。邦銀の直面する問題を多方面への調査を踏まえた取り上げた中々良い記事だと思う。この記事の記者の方からはインタビューを受け、記事の中に私の名前が実名で出てくるのでヨイショをする訳ではないが・・・
エピソードを省略して記事のポイントを紹介しよう。
- ムーディーズ・ジャパンのSVPレイモンド・スペンサー氏は「リテール銀行は複雑な業務ではない。コンビニエンスストアの様に運営するべきだ。なぜ銀行は顧客が訪問できない時間帯(典型的には9時ー3時)に店を開けているのだろう?」と疑問を呈している。
- 最大手の三菱東京UFJ銀行(4月1日より「東京」が消える)では、過去10年の間に店舗を訪れる顧客数は40%減少する一方インターネットバンキングのユーザーは40%増えた。
- 邦銀は低成長と低金利という二つの重荷を背負っている。ムーディーズ・ジャパンによると邦銀のリターンオンアセットは0.3%で英国の0.8%、米国の1.0%よりはるかに低い。邦銀よりリターンオンアセットが低いのはドイツの銀行だけである。
- KPMGは将来、世界的なテクノロジー企業が銀行業界を支配するようになり、2030年までに銀行はわき役に追いやれると予測する。
- 邦銀の競争相手は同業だけではない。中国のアリババ集団のような金融コングロマリット化した企業が日本にやってくる可能性がある。
- もっとも邦銀は手をこまねいている訳ではない。昨年9月に三菱UFJフィナンシャルグループの平野社長は9,500人の人員削減や516の営業店の内100店舗をテレビ電話等で顧客をアシストする自動化店舗に切り替えると発表した。
- これに追随してみずほフィナンシャルグループも、10年間で1.9万人の人員削減を行い、100店舗を閉鎖すると発表した。
- しかし英米の銀行のリストラ速度はもっと早い。英国の銀行は1989年以降年間300店のペースで銀行店舗を閉鎖している。米国では2017年6月までの1年間に1,700の銀行店舗が閉鎖された。
- 日本のメガバンクは身の丈を縮めているだけだはない。成長著しい東南アジアという「ブルーオーシャン」での活路を求めて、三菱UFJフィナンシャルグループは現地銀行への出資比率を高めている。
- 転職を斡旋するリクルート・キャリアに職探しを登録した銀行員は、2017年4月―9月の間で約3割増加し、1万人に達している。その多数は35歳以下である。
自分が働いてきた業界が縮小せざるを得ない状況を見るのは寂しいものがある。
しかし世の中変わらないものはない。アメリカの神学者ラインホルト・ニーバーは第二次世界大戦に出征する兵士に次のような祈りを捧げた。
「神よ、変えることのできない事柄についてそのまま受け入れる平静さを、変えることのできる事柄についてはそれを変える勇気を、
変えることのできないものと変えることができるものを見極める叡智をお与えください」
「金融」という機能は永遠に社会からなくならないが、金融の担い手は恐らく変わっていくだろう。
今何が変わり何が変わらないかを見極める力が求められている。