昨日(2月15日)米国株は、午前中に一時的な下落はあったものの、シスコ、アップルなどIT銘柄が堅調で5日連続の高値引けとなった。
この結果ダウは25,000ポイントの大台を回復して、25,200ポイント(306ポイント・1.23%)で終了した。
今月第2週に大幅下落した株価は着実に回復しつつある。それは「インフレと経済成長の綱引き」に対する市場参加者の見方が冷静になってきた証(あか)しのように思われる。
今月の株価急落は、インフレ懸念から債券利回りが急騰したことが主な原因と言われているが、より根本的な原因は株価が実力以上に上がり過ぎていたことだろう。
株価調整が遅すぎたため、激しい売り相場となったが、今週に入って「適度なインフレや金利上昇と経済成長は共存できる」といった見方が広がりつつあるのではないだろうか?と私は考えている。
過去3か月のダウと日経平均のパフォーマンスを見ると、ダウは+8.28%で日経平均は-2.47%と日本株の下落の大きさと戻りの悪さが際立っている。
米国株は既に今年3回程度の政策金利の引き上げを織り込み、日本では金融緩和の持続が織り込まれているにも関わらずだ。
日本政府は今日にも黒田日銀総裁の再任案を衆参両院の議員運営員会理事会に提示する予定だ。再任案では副総裁に雨宮日銀理事と早稲田大学の若田部教授の副総裁任命が含まれるらしい。若田部氏は積極的な金融緩和を主張するリフレ派と考えられている。
だが世界的に見ると米国はリーマンショック後の金融超緩和策から脱却し、欧州もそれを追随する傾向にある。
そこで起き始めていることが「インフレ・金利上昇懸念と経済成長の綱引き」だ。それは時として株式相場に大きな波乱をもたらす。
だが幾つかの波乱を繰り返しながら、金融政策は正常化に向かうと私は考えている。
一方日本は全く蚊帳の外だ。もし日本が日銀によるETFの購入等を含む異常な金融緩和策を止めたらどうなるのか?と身構えざるを得ない。
世界の投資家は日本株市場の持っているこの本質的なもろさを懸念しているのかもしれない。
巷間「貯蓄から投資へ」と叫ばれることが多い。私も基本的には投資派である。
だが投資の一番のポイントは何に投資するか?である。下のグラフは30年以上の長期にわたるダウと日経平均のパフォーマンスを比較したものだ。
日経平均に比べてダウは100倍以上のパフォーマンスの高さを示している。
米国株式市場は「貪欲と恐怖」「経済成長期待と物価上昇リスク」「減税メリットと財政赤字拡大懸念」など色々な綱引きをしながら、長期的には成長を続けている。綱引きがあることで市場は健全性を保っているのである。逆にいうと綱引きのない市場は不健全であり、大きな破たんリスクを抱えているのである。