昨日の米国株式市場も振幅の大きな相場だったが、それなりに落ち着きは取り戻しつつあるようだ。WSJの記事も足元の相場の話よりは、少しのんびり?した話が目に付いた。
その一つが「株価の変動は消費者にどのような意味を持つのか?」という記事。
記事はまず「資産効果」の限界消費性向の具体的数値に言及する。資産効果とは株式などの資産価格の上昇(下落)が個人消費を増加(減少)させる効果を指す。
資産効果は広く認められているが、実際100ドルの資産増加があった時、消費がどれ位増えるかという金額の話になると、かなり意見が分かれている。ムーディーズのアナリストは4.5ドルといい、WSJの調査では12ドルと述べている。
日銀は2016年4月の展望レポートで「先行研究によると100円の資産価値の増減に対して個人消費は2~4円変動する」と述べているから、ムーディーズの意見に近い。
ムーディーズは、米国の家計資産(住宅と株式)はリーマンショック後20兆ドル増え、資産効果により消費支出が9千億ドル増えたと推計している。仮に資産効果がなかったとすると経済成長率は0.5%低下していたことになる。
しかし具体的に資産価格の変化がどのように家計支出に影響を与えるか?ということになると話は少々複雑である。
所得上位10%の層の株式保有額の中央値は36.3万ドルで20年前の20万ドル(インフレ調整後)から8割以上増えている。この層がもっとも株価変動の影響を受けそうだが、この層は株価が変動してもそれを吸収する余力があるので急に支出を抑えたり、逆に支出を急に増やすことはないという。
所得中位20%の層になると、平均株式保有額は1.5万ドルなので、資産効果の家計に及ぼす影響は小さい。またこの層の48%の家計は株式を保有していないから資産効果の影響は受けない。
この記事を読む限り、多少株価のブレ幅が大きくなっても、すぐに個人消費に大きな影響がでることはなさそうだ。
記事では言及されれいないが、ひょっとすると米国の資産効果は株価よりも住宅価格の方が大きいのではないか?と考えたりする。
何故なら個人による株式投資が盛んだといわれている米国でも株式を保有している人の割合は限られているのに対し、住宅を保有している人ははるかに多いからだ。住宅価格の限界消費性向などという研究があれば読んでみたいと思う。