今日(7月17日)の日経新聞朝刊に「定年後も8割の人が働きたいと考えている」という記事がでていた。
「60歳以上の男性の6割が継続雇用の処遇改善を希望している」「継続雇用を実施している企業の4割は人事考課を実施していない」と記事はつなげているので、記事を書いた人の意図は「定年後8割の人が働きたいと考えているのだから、企業側も再雇用者のモチベーションを高める仕組みを導入するべきだ」ということなのだろう。
これは一つの見識だと思うが、私は定年を機会に(あるいは定年前でもよいが)別の働き方をするという選択肢について考えてみたいと思う。
別の働き方については「資格を活かして独立して働く」という働き方と「別の会社でこれまでのノウハウを活かして働く」という働き方があるが、ここでは後者について話を進めたい。
私はサラリーマンの仕事能力は、「間口の広さ」×「奥行の深さ」×「視野の高さ」で決まると考えている。間口の広さというのは携わてきた業務の種類で、奥行の深さというのは個々の業務に関する専門性のレベルで、視野の高さというのは広い意味の組織運営能力と考えている。
この3つの方向総てにおいて優れているという人は稀である。一般的にいうと専門性の高い人はその分野に特化しているので間口が狭くなり、間口の広い何でも屋は個々の分野では専門性が浅くなる。また専門性の高い人は組織運営に力を注ぐことを避ける傾向があるので組織運営能力が磨かれていない傾向がある。
「視野の高さ」は広い意味でのリーダーシップということだが、私は日本の企業の役員・部長クラスを想定するよりも大きなプロジェクト(例えば大きなスポーツイベントの開催など)のプロジェクトマネージャーを想定する方が良いと考えている。何故なら日本の企業の役員・部長クラスは「視野の高さ」で選ばれるとは限られておらず、「年功」「これまでの会社への貢献度」「社内外の人脈」などの要素で選ばれることが多いからだ。
リーダーシップとは色々な動機を持つ関係者を合意形成に導く能力ともいえる。
アメリカのようにCEOクラスの流動化が進んでいる社会では本当の意味の「視野の高さ」=リーダーシップが仕事能力として評価されるといえるが、日本ではまだこの市場は小さいと思われる。
従って一般にサラリーマンが定年前後に新しい職場を探す場合は「間口の広さ」か「奥行の深さ」を売り材料にし、もし専門性の高い組織運営能力を持っている場合はそれを加点材料にするということになる。
同じ企業に継続雇用される場合は通常ポストオフされ組織運営から切り離されるし、定年前の組織に所属することが多いから「間口」も制限されることが多い。
つまり一般的にいうと継続雇用という仕組みはサラリーマンの3方面に広がる能力の内、奥行の深さにのみ注目した制度ということができる。
逆にいうと「間口の広さ」や「視野の高さ」でサラリーマンの仕事能力の体積を大きくしてきた人材にとっては継続雇用制度はなじみが悪い制度ともいえる。
「間口が広い」とか「視野が高い」と思っている人は積極的に外の世界に飛び出すべきなのだ。それがその本人と受け入れる企業を活性化し、更には日本を活性化するのである。
このような仕組み作りにも力を入れてほしいと思う。