WSJにBank of America's workers prepare for the Botsという記事がでていた。BotsというのはChatbot「おしゃべりロボット」バンクオブアメリカの文脈でいうと同行が今年5月から顧客向けに導入した人工知能搭載の仮想アシスタント・エリカEricaを指す。
従って表題は「バンクオブアメリカの従業員は仮想アシスタント・エリカに腹をくくる」という意味である。
バンクオブアメリカは、従業員がエリカにより仕事を奪われるのではないか?と悩むことを望んでいない。遅かれ早かれある種の仕事はエリカに奪われるので、そのことを悩むよりも具体的な対処策を提供しようというのがバンクオブアメリカの幹部の考え方なのだ。
エリカは音声やテキストメッセージに対応することで、顧客の求めるサービス~例えば紛失したキャッシュカードを無効にするなど~をこなす。つまり現在銀行員が行っている仕事の中のある部分はエリカに奪われることは間違いない。
これに対して同行はオンライン学習のプログラムを従業員に提供して、従業員が新しい仕事~つまりロボットではできない仕事~に転進することをサポートすると述べている。
最も過去の同行の従業員の減り方(2011年末の282千人から2017年末の209千人に7万3千人減少。これは日本のメガバンク2行分の従業員数合計に匹敵する数字)を見ると、これが経営幹部の従業員に対するリップサービスなのか、本心なのかは私には即断できないが。
2018年にAutonomous Researchが発表したレポートによると、2030年までに銀行業界の従業員内120万人のポジションが人工知能により何らかの影響を受ける可能性がある。
全米銀行協会の統計によると2018年第1四半期時点での業界全体のフルタイム従業員数は207.6万人である。上記の120万人がフルタイムのポジションを指すのかパートタイム込みなのかはわからないが、仮にフルタイムのポジションとすれば、銀行業界全体では6割近いポジションが人工知能の影響を受けることになる。
Autonomous Researchの調査によると一番影響を受けるのはテラー(485千人。120万人の4割)、次がローンオフィサー(250千人2割)、3番目がカスタマーサービス(219千人2割弱)だ。
4番目に影響を受けるのは、ローンの受付者や事務担当者174千人である。なおローンオフィサーとローンの受付・事務担当者を合計すると424千人で影響を受ける人全体の35%に相当する。
ビッグデータによる統計的与信審査が適している住宅ローンはやがて人工知能により諾否が下されることが多くなるのだろう。
今銀行で住宅ローンを担当している人は「手に職をつける」ために何か勉強を始めた方が良い。もっとも邦銀がバンクオブアメリカのようなオンライン学習プログラムを提供しているかどうかは筆者の知見の及ぶところではない。