WSJに掲題の記事が出ていた。原題は"Reshoring" report finds factory work not returning to U.S.である。
アメリカが製造業の国内回帰を目標の一つとして中国への関税強化をしているとすると、その点ではアメリカの政策は的外れとなっている。
対中国関税強化にも関わらず、2018年の中国および他のアジア13か国からの米国への工業品の輸入は9%増加して8,160億ドルとなった。またアジア諸国からの輸入品と米国国産品の比率も2017年の12.7%から2018年には13.1%に増加している。
この問題を取り上げているATカーニーのレポートは「我々が見ているものは一種の中国の分散である」と述べている。米国企業は一部を除き、米国回帰を行うよりは、サプライチェーンをベトナム、フィリピン、カンボジア、インドに拡大している。
これら中国以外のアジア諸国は賃金の点では中国より安いが、物流インフラや工場のキャパシティでは中国に劣るので、中国が米国への最大の輸出拠点であることは変わりがない。
なお工場の米国回帰が検討されている分野は精密機械等自動化により米国の高い賃金を吸収できる分野に限られているようだ。
一方中国では関税の影響で、工場出荷価格の上昇率が鈍化していて、今後下落する可能性が高いとみるエコノミストがいる。出荷価格の低迷は中国企業の収益を悪化させる。
米中貿易摩擦は、製造業についてみると米中ともに頭の痛い話である。