金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

対中国関税強化でも製造業は回帰せず、アメリカへ

2019年07月11日 | 国際・政治

WSJに掲題の記事が出ていた。原題は"Reshoring" report finds factory work not returning to U.S.である。

アメリカが製造業の国内回帰を目標の一つとして中国への関税強化をしているとすると、その点ではアメリカの政策は的外れとなっている。

対中国関税強化にも関わらず、2018年の中国および他のアジア13か国からの米国への工業品の輸入は9%増加して8,160億ドルとなった。またアジア諸国からの輸入品と米国国産品の比率も2017年の12.7%から2018年には13.1%に増加している。

この問題を取り上げているATカーニーのレポートは「我々が見ているものは一種の中国の分散である」と述べている。米国企業は一部を除き、米国回帰を行うよりは、サプライチェーンをベトナム、フィリピン、カンボジア、インドに拡大している。

これら中国以外のアジア諸国は賃金の点では中国より安いが、物流インフラや工場のキャパシティでは中国に劣るので、中国が米国への最大の輸出拠点であることは変わりがない。

なお工場の米国回帰が検討されている分野は精密機械等自動化により米国の高い賃金を吸収できる分野に限られているようだ。

一方中国では関税の影響で、工場出荷価格の上昇率が鈍化していて、今後下落する可能性が高いとみるエコノミストがいる。出荷価格の低迷は中国企業の収益を悪化させる。

米中貿易摩擦は、製造業についてみると米中ともに頭の痛い話である。

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パウエル連銀議長の緩和発言で米国株は高値圏へ

2019年07月11日 | 投資

昨日(7月10日)パウエル連銀議長は米下院金融員会で「世界的な景気減速と貿易問題進展の不透明性に備えるために、連銀は金融緩和策を取る準備をしている」と発言した。

先週金曜日に発表された雇用統計が景気の底堅さを示すということはあったものの、パウエル議長は「私にとってボトムライン(肝心かなめのこと)は、世界経済の成長性に関する不透明さと貿易問題の重しだ」と述べ、一時的なポジティブなニュースに左右されない姿勢を示した。

株式市場は連銀の緩和姿勢を好感し、ナスダックは高値を更新、S&P500もザラ場で一時初めて3,000ポイントを超える場面があった。

最近米国株市場では「経済面で良いニュースは株式相場には悪いニュース」という言葉が流行っていたようだが、連銀が個別の経済統計に左右されずに、物価上昇率などを見ながら、緩和方針を明確にしたことは株式相場には好材料ではある。

ただし今月末の政策金利の引き下げは既に相場には織り込まれているから、この材料だけではこれ以上の株価上昇は望めないだろう。

ひょっとするとこの辺りが当面の高値になる可能性があると私は考えている。

大幅に株式エクスポージャーを落とすつもりはないが、少しキャッシュポジションを増やしてbuy the dipに備えておこうと考えている。

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