長い天候不順の後、先々週から2週続けて山登りに行った。先々週が乗鞍岳、先週が赤城山と日光白根山だった。
この三山はいずれも深田久弥の「日本百名山」中の山。
もっとも赤城山は関越自動車道の渋滞で最高峰の黒桧山までは登ることができず、途中の駒ケ岳で引き返したが。
深田久弥の「日本百名山」は、多くの登山愛好家に強い影響力を持っている。先日乗鞍岳に登った時も、一緒に登った比較的若く最近登山を始めた人から「乗鞍岳は百名山ですよね。乗鞍岳の番付はどれ位でしょうか?」と聞かれた。
深田久弥は百名山を選んだが、番付は行っていない。山岳雑誌などで番付を行った記事を見た記憶はあるが、おおやけのものではない。
そもそも番付は何で決めるのか?山の美しさというのは主観的な判断に依拠するから身びいきに陥る。
登山の難しさというのはある程度客観的に評価できるが、登るルートや時期はどうするのか?という問題がある。
夏の乗鞍岳は標高2千7百メートルまで車で登ることができる登り易い山だが、厳冬期の乗鞍岳はそれなりに厳しい山である。
また私は登ったことがないが、無雪期にも幾つか歩いて登るロングコースもあるので、山登りの難しさは一概に決められるものではない。
「百名山愛好者」の方に読んで貰いたい深田久弥の一文がある。それは「山頂の憩い」~『日本百名山』その後(新潮文庫)の序文だ。
深田久弥はこう述べている。
「そういう楽しみ(百名山のうち自分がいくつ登ったかいう楽しみ)は年配の人に多いようである。学生時代山岳部に属したというような人は、剣とか穂高とか、谷川の岩場とか、冬の富士とか、激しい山登りはしているが、山域は限られているようである。しかし広く山を漁るだけが能ではないから、私はそういう訓練的な山登りも尊重する。」
また深田久弥は、自分が住んでいる地方の山を春夏秋冬を通じてあらゆるルートを登っている人の山登りも尊敬すると言っている。
つまり年配の人に多いピークハンティング的な山登りの他に困難を追求する山登りや一つの山を深堀する登山も深田久弥は尊重しているのである。
まあ、山の番付などあまり気にせずに遠くから見て引かれる山から登り始めるのが良いと私は思う。そしてその山が気に入れば、四季を通じてルートを変えてその山を登るのが良いと思う。
上の写真は10年ほど前に登った初冬の日光白根山で、下の写真は先週登った真夏の日光白根山だ。
通常は夏(無雪期)に登った山を冬(積雪期)にまた昇るということが多いと思うが、たまたま日光白根山に関しては冬山が先行した。
私は深田久弥の「日本百名山」は85座程度登っているが、特に100座登ろうと考えている訳ではない。一方剣岳のように学生時代に10回程度登った山があり、金峯山・巻機山・至仏山のように四季を通じて何回も登っている山もある。日光白根山もその一つだ。
私は「百名山教徒」ではないが、結果的には「山頂の憩い」の想いには掬い取られているのである。