今年の第2四半期(5~7月)で過去最高の売上を記録し、更に売上が伸びると予想を発表したセールス・フォース。来週からダウ銘柄に選定される予定の株価は昨日1日で26%も上昇した。
そのセールス・フォースが、全従業員54千人の約2%に相当する1千名のポジションを削減すると発表した。これは1千名を解雇するという意味ではない。
非成長分野のポジションを減らして、成長分野の雇用を拡大するという戦略の中で、配置転換を希望する人には60日間の余裕を与えて、社内での新しい職探しのチャンスを与えるという。
また社内で新しいポジションに着地できなかった人には半年分の給与を支払って離職させる予定だ。会社の報道担当者はWe are helping them find the next step in their careers, whether within our company or a new opportunity(彼等が彼等のキャリアの中で新しいステップを見つけることを会社は支援している。それが当社の中であれ、(社外の)新しい機会であれ)と述べている。
この言葉は美しい。だが実態はどうだろうか?
米国の企業では、担当職務ベースで雇用契約を結ぶ。たとえば経理部の課長とか、金融機関向けセールスの担当者という具合にだ。だからある業務を縮小する(例えば金融機関向けセールスを縮小)とその部門の担当者が要らなくなる。この場合日本の会社であれば、金融機関向け営業マンを成長分野(たとえばIT企業)向けの営業マンに配置転換するといったことが可能だが、米国ではそうは簡単にはいかない。成長分野では優秀な人材を社外からも探すので、社内で新しいポジションを見つけるのは容易でないことも多いだろう。
コロナウイルスを追い風にして業績を伸ばしたが、そこで働く従業員は楽ではなさそうだ。
WSJは同社のベニオフ社長の次の言葉を伝えている。
Mr. Benioff, on the analysts call, said the pandemic has been a trying time for his company’s employees, with a third suffering mental-health challenges.
ざっと訳すると、「ベニオフ社長はアナリストとの電話で、コロナウイルスの感染爆発は当社の従業員にとって試練の時で、社員の1/3はメンタル・ヘルス上の困難を抱えていると言った」ということだ。
Mental-health challengesという言葉がどれほど深刻な状況を指すのかは記事からは不明だが、社員の1/3が程度の問題こそあれ精神的な負担を感じているというのは、異常という気がしないでもない。業績の良い会社は良い会社なりの問題がある、ということか・・・