コロナウイルス感染拡大に伴い、政府は再びテレワークで働く社員の割合を7割まで高めるよう経済界や各企業に要請する予定だ。
だが一部の大企業やIT関連企業を除いて、テレワークはそれほど進んでいない。
テレワークが進まない理由として「現業や対人折衝が多くテレワーク馴染まない」「IT投資に関する人材・資金不足」などをあげる評論家の意見が目立つ。
だがもう一つテレワーク導入は阻む壁があると私は考えている。
その壁は「管理者の壁」だ。より正確には管理技術の壁であり、日本の会社が管理者に「ヒューマンスキル教育」を行ってこなかったツケが回ってきたとも言うことができる。
WSJにHow the Pandemic Can Turn Bad Bosses into Good Ones(コロナ感染症はどのように悪い管理者を良い管理者に変えるか」という記事がでていた。
簡単にいうと「これまで管理者は自分のやり方を部下に押し付けてきたが、テレワークになるとそれができなくなり、管理者は部下の成果に焦点をおくようになる」「それは管理者の本来の役割~部下がベストを発揮できる環境を整える~に回帰する」ことで「必要なものは何だ。私はどんな手助けをすれば良いのか?」と「質問し部下の声を聴く」ことだと記事は述べている。
これらのことはヒューマンスキルの中の「コミュニケーション」「ヒヤリング(傾聴力)」「コーチング」に該当する。
ところが日本の多くの会社ではヒューマンスキル(人間力)というと「リーダーシップ(指導力)」「ネゴシエーション(交渉力)」を重視し、部下の話を真剣に聞く「ヒヤリング」は軽視されてきたのではないか?と私は考えている。
ヒューマンスキルのテキストは、ヒューマンスキルの7要素をあげている。
「ネゴシエーション(交渉力)」「リーダーシップ(指導力)」「コミュニケーション(個として部下に向かい合う)」「プレゼンテーション(説明力)」「ヒヤリング(傾聴力)」「コーチング(自発的な力の引き出し)」「ファシリテーション(合意形成)」だ。
テレワークを推進するには「プロセスは部下に任せて上司は成果にフォーカスする」成果主義に切り替える必要がある。
誤解してはいけないのは、成果にフォーカスするということは鞭を入れるということではなく、部下が成果を上げることができるように環境を整えることであり、必要なアドバイスを行うことも当然重要な上司の仕事だ。
命令で部下を動かすのではなく、部下の向上心を引き出すことで成果を高めることが大事なのだ。
そのためにはヒューマンスキルが必要で、それなくしてはテレワークの促進は難しいと私は考えている。