ロシアがウクライナの4州を不法に併合するという宣言を行って以来、ウクライナの反撃を報じるニュースが目立っている。
ロシアは併合宣言前に部分動員令で30万人の兵士を招集すると述べていて、ロシア国防省によると既に20万人の招集を行ったということだ。
だが招集した兵士が直ぐに戦力になる訳ではない。兵には訓練や兵器の供給が必要だ。訓練には個々の兵器の使用に関する訓練、集団的戦闘行動に関する指揮命令系統の徹底など技術的な訓練と士気の高揚がある。
WSJによると、ロシアは今年2月のウクライナ侵攻時に15万人の兵力を投入し、その後更に数万人の兵力を追加投入した。しかし米国は戦闘部隊の内8万人が、戦死・負傷または捕虜になり戦線から脱落したと推測している。なおこの数字は正規軍以外の傭兵などの損害も含まれているということだ。
ロシアが新たに招集した20万人はその穴埋めに使われる予定だろうが、そこにジレンマがあるとWSJは指摘していた。それは十分に訓練していない兵士を前線に投入しても、戦力にはならず、敵(ウクライナ軍)の餌食になってしまう、一方十分な訓練を施していると兵力不足から前線が崩壊してしまうという問題があるということだ。
逆にいうと現在ウクライナ軍はロシアの抱えるこのジレンマをチャンスとして猛攻をかけ始めたということができるだろう。
タイトルに「兵勢」という言葉を使ったが、これは孫子の兵勢第五から持ってきた言葉で、戦いでは勢いが非常に重要だということを示している。
つまりここが勝機だと思った時、一気に攻勢をかけることができかどうかが勝利の鍵となるということだ。
ウクライナの攻勢をサポートするべく、米国は6億ドル以上の支援を表明した。ウクライナが勝勢を明確にするには、ロシアが20万人の動員を戦力化する前に、そして冬将軍が地上戦の継続を困難にする前に、更に占領地を回復する必要がある。今どれ位勢いを加速できるかどうかが、戦局のポイントになってきたようだ。