今月初めにアメリカはサウスカロライナ州沖の領海で中国の気球を撃墜した。これに対し中国外務省は米国は過剰反応で国際規律に違反したと述べている。
スパイ気球問題がこれからどのように展開するのかは分からないが、アメリカでは本日全上院議員向けの非公開のブリーフィングが行われる予定だ。
スパイ気球というと日本人の中には太平洋戦争時の風船爆弾を思い出し、「中国はローテクな道具を持ち出して」と思う人がいるかもしれないが、スパイ気球には、衛星からは得ることができない情報を収集する目的もある。
侮るべきではないだろう。
そもそも中国はスパイ活動を重視する国だ。
孫子の兵法に次の文章がある。「孫子曰く 相守ること数年、以て一日の勝を争う。しかるに爵禄百金(しゃくろくひゃっきん)を愛みて、敵の情を知らざる者は、不仁の至りなり。 」
数年にわたる戦争準備が一日の決戦で成否を分けるにも関わらず、スパイ活動にかける金を惜しんで敵国の情報を収集しないのは兵士や人民に対する思いやりが欠けていると言わざるをえない、という意味だ。
WSJによると、中国の諜報活動は、習近平指導部が2015年に人民解放軍の組織再編成の一環として創設した戦略支援部隊が指揮をとっているという。
元米軍分析官で現在ハワイ・パシフィック大学で教鞭をとるシャスター教授は「中国の偵察能力はこの20年で大きく進歩し、現在の我々とほぼ同じだ。」と述べている。
軍事アナリストによると気球は視覚的なデータを集めるだけではない。たとえば軍事施設周辺の大気の状態を詳細に把握することで、その施設を超音速ミサイルで攻撃する時の飛行経路の計算に役立つという。
日本にもスパイ気球は来ていることは間違いない。中国の諜報活動恐るべしである。