金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

食糧危機に無関心で良いのだろうか

2008年04月17日 | 社会・経済

日本の新聞と海外の新聞を比較して、今一番気になるところは日本の新聞が「世界的な食糧不足リスクをほとんど取り上げていない」ところだ。日本よりも食糧自給率の高い米国でもニューヨークタイムズなどは海外の食糧不足の問題を大きく取り上げている。この前のG7会議でも信用危機の問題より食糧危機の問題の方がより重要な問題だということになったが、日本は食糧問題に能天気過ぎるのではないだろうか?

食糧不足に関わる問題は色々あるが、一つは貧困国で食糧不足から暴動など社会不安が広がることだ。又食糧輸出国が食糧インフレを抑制するために輸出制限の動きを高めた場合、食糧自給率4割を切る日本が食糧を確保していけるかどうかという問題がある。長期的には地球温暖化と食糧生産の問題だ。地球温暖化が全世界ベースで見た場合、直ちに食糧生産の減少を招くのかどうかは議論のあるところだ。識者の間では温暖化は、赤道に近い低緯度地域では旱魃等から食糧の減産が起きるが、高緯度地帯では食糧の増産が起きるという見方もある。仮にその意見が正しいとしても、食糧の偏在が地球ベースで社会不安を引き起こすだろう。

貧困国の食糧不足に関していうと、北朝鮮では2001年以降最大の食糧不足に陥っている。昨年の収穫時期に大洪水に見舞われたことに加え、ハードポジションを取る韓国の李明博大統領がそれまで毎年行っていた50万トンの食糧支援を停止しているからだ。また商業ベースで食糧の輸出を保証していた中国が自国のインフレ対策から食糧輸出を控えていることも事態を悪化させている。平壌では食糧価格は昨年二倍に高騰した。

世銀によると北朝鮮の食糧不足量は170万トンで、総人口の4分の1の当たる650万人の食糧確保が困難になっている。もっともこれでも1990年代半ばの飢饉の状態よりはまだましだと世銀は言っているが・・・・。

食糧不足の北朝鮮が自棄(やけ)になって、日本にミサイルを発射する可能性が高いとは思わないが、国が自壊するリスクはかなりあると私は考えている。その時どのようなことが起きるのか・・・・例えばある朝日本海にボロ船に乗った北朝鮮の難民があふれているということがあるのだろうか?

暫定税率で争うことも大事であるが、日本の食糧確保や農業の再生と地方の活性化あるいは東アジアの安全保障など政治家やマスコミにはもう少し先を見た議論が必要だろう。

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円は海外リスク要因で動く

2008年04月17日 | 金融

「円はまだ日本の通貨なのか?」これがHSBCの為替リサーチのヘッド・ブルーム氏を悩ます問題だとFTは切り出す。

結論からいうと今の円の為替レートは「国内要因ではなく、世界的なリスク・プレミアムの代用品として売り買いされていて、日本の国内経済の動きの影響をほとんど受けない」と彼は言う。

事実4月8日まで約1ヶ月間日銀総裁は空席だったが、それによって円が振り回されることはなかった。また3月の「短観」は市場予想より弱い数値だったが、円為替の反動は限られたものだった。また円株が弱いことは、円レートにネガティブな要因であるはずだが、あまり影響を与えていない。

ブルーム氏によると「市場は日本で何か革新的なことが起きているともまた将来起きるとも信じていない。世界は素早く変わっていくが日本の変化は遅い。円はリスク・プレミアムの代用品として取引されている」

もしブルーム氏の意見が正しく、そしてサブプライム危機からリスクが高まった世界の金融市場が安定化に向かうとするならば、円は売られることになるだろう。とするならば、円を売って米ドルを買う時期だろう。米ドル一辺倒のリスクが高いと判断するならば、ユーロと米ドルを混ぜて保有しておく時期かもしれない。

それにしても国内要因が無視され、他国の金融市場や経済パフォーマンスで通貨の価値が決まっていく「円」で良いのだろうか?

米国や欧州諸国がサブプライムや住宅危機を乗り切り、新しい発展路線に乗り始めた時、大幅な円安が起こり日本は食糧や原油等の輸入価格上昇に苦しむ・・・ということになってはいないだろうか?

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ノックインか?ノッキングか?

2008年04月16日 | 株式

最新号の週間ダイヤモンドに「リスク限定型投信を購入した個人投資家が思わぬ損をしている」という記事があった。広告だけで中身は見ていないがこれは「リスク限定型投信」という投信を購入した個人が思わぬ日本株の下落で損をしているという話である。リスク限定型投信というのは、投信の購入者がノックインKnock inオプションという日本株のプットオプションを売却し、そのプレミアムを金利の形で受け取るという商品だ。こんな説明をすると「頭が痛い。面白くない」という声が聞こえそうだが、私は難しい話をするつもりはなく「リスクのない投資話なんてないですよ。それに経験の少ない個人投資家にとってオプションを売るような商品には落とし穴がありますよ」ということを伝えたいのである。オプションを売るというと又難しく聞こえるが「保険を引き受ける」と考えても良い。リスク限定型投信に話を戻して、どういう商品設計かというと「2,3年という一定期間日経平均が30%等一定範囲以上下落しない限り、元本は100%償還される上4%程度の高い配当を受け取ることができる。しかし一定期間内に当初定めた範囲を超えて株価が下落した場合は、元本の保証はなくなり日経平均株価に連動して償還される」というものだ。

1986年から現在までの日経平均株価の騰落状況についてインターネット上の百科事典ウイキペディアから表を取り込み、データを分析してみた。ある年の年初の株価とその後3年間の日経平均の最安値を比較してみたところ、日経平均が3割以上下落しているケースが10回あった(全体は23回)。また平均の下落率は26.3%だった。一番大きく下落したのはバブルが崩壊した90年から92年の3年で日経平均は63%下落している。以上のようなことから日経平均が3割以上下落することはそれ程まれなことではないことが分かる。

次の期待値的な考え方から、リスク限定型投信のリターンを考えて見よう。期待値とは将来のリターンを確率的に計算する方法である。

次のように前提を置いてみよう。「リスク限定型投信を購入してから3年以内に一度は3割の確率で日経平均は3割を超える下落をする。日経平均株価は償還日にリスク限定型投信を購入した時の日経平均株価の75%になっている。7割の確率で元本が確保され、この場合4%の利息がもらえる。」

このシナリオのリターンは次のとおりだ。

4×3年×70%=8.4 ①  -25×30%=-7.5 ② 従ってこの投信のリターンは①+②の0.9になる。年平均では0.3%のリターンだ。

無論のこの計算の前提は株価が下落する確率や3年後の株価の水準を仮定の上で行っている。もっと多くのデータを駆使してもっともらしい計算をすることは可能だが、それは過去の話で将来の確率については一人一人の投資家が自分のシナリオを持つ他はない。それが自己責任というものである。

もし私の前提が妥当なものとするならば、リスク限定投信のリターンは確率的には銀行預金と余り差がないものになる。繰り返しになるが、これは上記の前提で計算した結果であり、違う前提を置くと当然違う結果がでることにご留意頂きたい。ただリスク判断の一助となれば幸いと考えて、私見を披露した次第である。

最後に駄洒落の世界だが、ノックインオプションがノッキング(自動車のエンジンががたつくこと)オプションになることもあるというとこにご注意を。

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東京ディズニーランド、一石二鳥案

2008年04月15日 | 社会・経済

私はディズニーランドが好きである。人工のきわみというべき壮大なフィクションが好きである。一方自然そのままの冬山や沢の源流が好きなのだから、相当矛盾していると思う。しかし矛盾しようがしまいが好きなものは好きで良いと思う。

さて東京ディズニーランドだが、今日4月15日に開業25周年を迎えるということで、今日の日経新聞に特集記事が出ていた。記事のポイントは「少子高齢化が進む中新しい顧客を開拓しないとジリ貧になる」というものだ。ただしどうすればジリ貧が防げるかという対策については余りぱっとした意見が述べられていない。

同日ニューヨーク・タイムズ(NT)にも東京ディズニーランドの問題点を指摘する記事が出ていた。こちらの方がより具体的な問題点と対策が出ていたのでちょっと紹介しよう。NTによると年間25.8百万人のビジターの内96%が日本人で、73%が女性である。一方大型テーマパークで弟分の大阪のユニバーサル・スタジオの外人ビジターは10%である。ユニバーサル・スタジオの2004年の外人ビジター比率は3%だったが、香港、韓国、台湾、タイにセールス・オフィスを開いてマーケッティングに努めた結果外人ビジターが増えた。

NTは東京ディズニーの外人ビジターが少ない理由について一つは「外国語による説明が少ない」ことをあげている。東京ディズニーには自分が入りたいアトラクションを予約できる「ファストパス」という仕組みがあるが、外人ビジターは仕組みが分からないのでほとんど利用していないということだ。もっともNTはディズニーランドが高いことも日本に観光に来る外人が行かない理由にあげている。

さて以上のような話を踏まえて私が考えついた「東京ディズニーランドの入場客を長期的に増やす」方法だが、それは「退職期を迎える団塊の世代の中で語学に堪能な人をディズニーランドのセールススタッフやガイドとして活用する」というものだ。

「海外出張や海外勤務もかまわない」という人には、アジアの各地に開く~オリエンタルランドにそんな計画があるかどうか知らないが~セールス・オフィスの駐在員や巡回指導員として活躍してもらう。また「セールスなんて仕事は嫌だが、東京ディズニーランドの中で外国人のガイドをするのはOK」という人にはガイドをして貰う。このようなガイドの人には現金による報酬を抑えて、ディズニーランドの入場券やホテル・レストランなどの利用券で支払う方法が面白いだろう。利用券などを受け取った人はそれを子供や孫あるいは友人・知人にプレゼントすることができる。こうすれば新しい客層を開拓することができるだろう。

冒頭述べたが私はディズニーランドが好きである。もし上で述べたような「ガイドのお仕事」でもあればちょっとやって見たいような気がするのでこんな提案を考えた次第である。

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インドがメディアで日本を越える日

2008年04月14日 | 社会・経済

FTによると、CNNなどを傘下に持つメディア大手のターナー社のインドでの売上が今年の第一四半期に日本での売上を上回ったということだ。ターナー社は地域別の売上高を開示していないが、インドでの売上は年率25-28%というハイピッチで拡大していて大きな収益源になっている。
ターナー社は先週アニメ映画と娯楽チャンネルの二つのプロダクションをスタートさせた。インドではテレビの売上高は年18%、映画は年14%という高い成長率で伸びている。

インドのメディアはコンテンツや投資に対する規制の面で中国よりも自由が多いので、外国のメディア企業にとって魅力的な市場であり、市場規模は中国を上回っている。ウオルト・ディズニー、ジョージ・ソロス、ゴールドマン・ザックス などといった戦略的投資家に魅力的な市場になっている。

インドの経済成長が続き、一人当たりの所得が一定レベルを超えてくると、巨大な消費市場が出現する。私はインドが中国や他のエマージング市場と異なるところは「英語を話すことができる人が際立って多い」「民主主義・議会制度が定着した国である」ところだと見ている。インドには中国とは違った面で潜在性の大きさがある。業種によってはその規模はアジア最大あるいは世界最大規模になるだろう。
「何々の売上でインドが日本を越えた」などということがそれ程ニュースヴァリューを持たなくなる日が来るかもしれない。

と思いながら私はインド株をポートフォリオの中に入れている。もっとも昨年まで勢いの良かったインド株も今年は下落して、少し含み損が出る位だがインドについては余り心配は要らないと私は考えているがどうだろうか?

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