金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

職業訓練はコストではなく投資~ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁

2017年10月06日 | 投資

フィラデルフィア連銀のパトリック・ハーカー総裁は昨日オースティンで行った演説の中で、連銀の「労働力開発レポート」に言及して、職業訓練の重要性を強調した。

連銀のレポートによると、労働省は今年4月に求人数が6百万人に達した。これは2000年に同省が統計を撮り始めて以来最高のレベルだ。しかし労働参加率は過去40年の中で最低水準であり、多くの企業は人材確保が難しいと報告している。

優秀な人材の囲い込みは熾烈になっている。たとえばアマゾンは昨年MBAを1千人採用し、採用市場でも破壊者と呼ばれている。

求人数が多いのに、労働参加率が伸びない理由の一つはスキルのギャップだ。連銀レポートは、雇用者側にニーズとスキルを持った労働者を提携させることが、経済の潜在的な成長率に到達する唯一の方法だと述べている。

ハーカー総裁のスピーチもこの点を強調している。

・労働者を訓練し、適所に配置することは、税金や寄付等で賄われるコストとみなすのではなく、経済の将来に対する投資とみなすべきである。

・労働力開発の改善は、連銀の使命の一つである雇用を極大化と軌を一にしている。

・職業訓練と適所配置は、低所得層・低教育労働者がより給料の高い仕事を探す機会を提供し、勤労者の福祉を改善する。

・米国の労働者がより生産性の高い仕事にシフトすることは、溶接工から医療技術者といった熟練技術者不足という問題の解決につながる。

・そして最終的にはより強い経済成長につながる。

日本の失業率は米国より低いが、不完全失業率については米国より高いという推計もある。つまり働いて給料は貰っているが、より高い給料が貰える仕事があれば変わりたいと考えている労働者が日本には沢山いるということだ。

国の将来を考える時、この問題は極めて重要だ。働く人の給料を増やし、老後資金を自分で賄うことができる人を増やしていかないと国は成り立たなくなる。

日本企業全体では400兆円近い利益余剰金が積みあがっているという。この利益余剰金をもっと人材投資に活用することを考えてもよいだろう。

 

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総選挙は相場の材料にならず?

2017年10月05日 | 投資

新聞によると、10日公示22日開票予定の衆院選では、1000名超が立候補する見込みだ。

自民党・公明党の与党、小池東京都知事率いる希望の党、前民進党左派の立憲民主党などが激突する構図だが、選挙結果がマーケットに与える影響は限定的だろう。

2日前にNHKが実施した世論調査では、「与党の議席が増えた人が良い」と答えた人は20%、「野党の議席が増えた方が良い」と答えた人が33%、どちらともいえないが42%だった。

安倍内閣の支持率は先月比7%下がって37%。不支持は44%と支持を上回っている。

したがって世論調査からみると与党勢力の減、野党勢力の増が予想され、政局が不安定化する可能性が読み取れる。

だが海外の識者の見方は異なっている。

WSJはハーバード大学のウォルター・ラッセル・ミード氏(外交論)の寄稿を紹介している。

同教授は「小池氏は外交政策で安倍首相のナショナリスト的な考えと共通する部分が多く」「小池氏の急な台頭は日本の政治を何十年も支配してきた基本的な政治モデルを強固にするかもしれない」と述べている。

そして同教授は「希望の党は欧米流の野党ではなく、伝統的な自民党の派閥に見える」と喝破し、「小池・安倍両氏の支持勢力は、自民党の最終的な勝利を意味するのはほぼ間違いない」という。

同教授は「米国の約束する安全保障にかってほど日本は安心して頼ることができない。世界は日本が国家安全保障と軍事的な姿勢が急速に進化することを期待するはずだ」と結んでいる。

ミード教授の見方が、海外の市場関係者の見方を代表しているとすれば、選挙結果とその後出現する政権はほぼ既定路線上のものでビッグサプライズはないということになるだろう。つまり総選挙自体はそれほど相場の材料にならないのではないだろうか?

 

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バフェット氏は税制改正を見極めるまで株は売らない

2017年10月04日 | ライフプランニングファイル

昨日(10月3日)米国株は、好調な9月の自動車販売を受けて続伸した。また企業減税を中心足した税制改正に対する期待も高まっている。

ウォーレン・バフェット氏はCNBCのライブで幾つか興味深いコメントを残した。

・株価のバリュエーションは、金利水準と一緒に考えることで意味を持つ。

・しかし自分は連銀の金利政策をベースに投資判断をした記憶はない。

・自分は市場環境よりも投資先の会社が好きかどうか?で株を買っている。

・現在共和党が提案している税制改正を見極めるまでは株は売らない。税制改正が実現する可能性は市場予想より高いと思う。

バフェット氏が今株を売るより税制改正後に(売るとすれば)売る方が良いと考える理由は「利益に対する課税率が低くなる」ことが一番の理由だ。

もし同じようなことを考えている人が多いとすれば、売り圧力は少なく高値圏の相場を支えることになる。

もっともバフェット氏は長期投資家だ。

彼は先月フォーブスのパーティで、ダウは100年後に100万ポイントを超えるだろうと言っていた。

またバンクオブアメリカの筆頭株主であるバフェット氏は、現CEOを経営改善努力を評価し、超長期に株を持ち続けると明言している。

 

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帰属意識が低い方がシニアライフは楽?

2017年10月03日 | シニア道

先日大学山岳部の同期生が集まる機会があり、昔話に花が咲いた。

同期生といっても全員が最後まで山岳部にいた訳ではない。最後まで残ったのは3割程度である。

私は最後まで残った組なので当時は「自分は所属集団への帰属意識が強い人間だ」と思っていた。

ところが年とともに山岳部OBの集まりに顔を出す機会が減ってきた。一番大きな理由は母校から離れたところで暮らしていることだと思うが、それを差し引いても、「寄れば昔の話をする」集団に魅力を感じなくなったことも大きい。

「所属集団」という点で我々サラリーマン経験者にとって一番大きな所属集団は会社である(家族といわずに会社というところが既に会社に毒されている?)。

会社には卒業後も〇〇支店OB会などという集まりがあるが、私はこのような集まりにもほとんど顔を出さない。

顔を出すのは「今何かをするための集まり」である。山登りについては元の会社の山好きと作った同好会があり、その連中とはよく山に出かける。もっともこの同好会はかなりオープンな組織で、仲間の外部の友達が参加して、今ではオリジナルメンバーより活発に活動している位だ。

日本の会社は「忠誠心」という形で所属集団=会社への帰属意識を求めてきた。忠誠心の高低はある階層以上の人事考課では一番ウエイトが高かったかもしれない。

集団の所属員に取っとも「帰属意識」を持つことは実は楽な場合が多い。何が楽か?というとあれこれ考えなくて済むからである。考えるということは脳を疲労させる。だから考えない方が楽な場合が多いのだ。

だが会社を卒業してシニアライフに入る楽をしてきたツケが回ることがある。

それは身の回りに家族以外に自分を包んでくれる帰属集団がなくなるからだ。家族といっても子どもたちは独立している場合が多いから、配偶者だけが身の回りの家族ということが多いだろう。退職した夫が妻に過剰な帰属意識を持ち、また妻の過剰な帰属意識を求めると「主人在宅ストレス症候群」だとか「夫源病」などと呼ばれる現象が起きる。

その原因は夫の会社への帰属意識が強すぎたことにある。

それは帰属意識の蓑に隠れて考えることをストップしてきたツケということもできる。

本当は仕事の上でも、組織ファーストではなく、目的ファーストで考えるべきだったのだ。何かを達成するために社内外の人材を集めてプロジェクト的に取り組むという訓練ができていなかったのだ、と思うことがある。

しかし働いている時は組織ファーストでないと、組織の階段を登ることができず、力を発揮する機会が少ない。力を発揮するポジションにいないとプロジェクトを回すことができない・・・

サラリーマンの一つの難しさはこの辺りにあると私は思う。組織ファーストから目的ファーストへのギヤチェンジができるかどうかが楽しいシニアライフを送ることができるかどうかの一つの分岐点なのである。

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出遅れている日本株は米欧に追いつけるのか?

2017年10月03日 | 投資

出遅れていた日本株がようやく上昇してきた。しかし日本株か過去にも高値をつけた後下落を繰り返しているので、投資家の期待を裏切ることが多かった。

WSJはAs Japan's stocks rally, is the recovery finally here?という記事で投資家の強気・弱気が交錯する状況を述べている。

上のグラフは米国・欧州・日本の10年間の株式リターンを示したものだ。日本株には腰の入った投資家が少なく、利食いが多いので中々株価が伸びない。現在のところ日本株は欧米株に較べると4割がた安いところで取引されているというのがプロの見方だ。

割高なものを売って割安のものを買うというのが、投資のコツであるとすれば日本株にもっと買いが入って良いはずである。

景気に対するセンチメントも良い。昨日日銀が発表した短観によると大企業・製造業のDIは4期連続して改善し、10年ぶりの高水準になった。

米国ではリーマンショック後の超金融緩和政策から正常化への舵取りが始まるほど経済は回復した。欧州も米国の後を追い始めている。日本ではまだまだ超緩和策は続きそうだが、景気回復の足取りは鮮明になってきた。

内外投資家の間でアベノミクスの成果として評価している企業統治についても一定の成果が出始めている。

企業の自己資本利益率は安倍政権発足時2012年の約5%という水準から8.4%に上昇した。

この辺りは日本株を買う理由として挙げることができる。

一方人口減少・賃金上昇の停滞・労働法改善の遅れ・財政赤字・政治地政学的なリスクの高まりなどは、日本株投資に腰が入らない理由として挙げることができる。

ではどうすれば良いのか?

私は日本株は銘柄選択的に投資するべきだと考えている。私は基本的にインデックス投資推奨派なのだが、日本株については特にこの時期インデックス型ではなく、銘柄選択的な投資をするべきだと考えている。その理由は簡単だ。

日本経済全体が拡大していくという時代はとうの昔に終わっているからである。どの産業のどのあたりにいるかということで企業が伸びるかどうかがはっきりする時代なのだ。だから投資する企業を選ばないといけない。

銘柄選択的に投資するということは必ずしも自分で個別株を買うことを意味しない。投資方針がはっきりしたアクティブ投信を買うのも一つの方法だ。

今後日本株が米国株など世界の株をアウトパフォームするかどうかは分からない(分かれば苦労しない)。

ただ投資方法によっては一定期間内は他の市場より高いパフォーマンスを上げることができる可能性は出てきたと考えてよいと思う。

一定期間というのは日本株の相対的割安感がなくなるまでである。

 

 

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