金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

香港株、ベア・マーケット入り。米国株への影響は?

2018年09月12日 | 投資

WSJによると昨日(9月11日)香港株(ハンセン指数)は、ベア・マーケットに入った。ベア・マーケット(弱気相場)入りは前の高値から20%以上株価が下落した場合と定義されている。香港株は今年1月26日に高値をつけていたが、そこから20%以上下落したので、弱気相場に入ったと言われる訳だ。

最近の香港株の下落の直接的な原因は先週トランプ大統領が、中国からの輸入品2,670億ドルに追加関税を課すと発表したことだ。

長引く米中貿易摩擦が香港株下落の大きな原因だが、新興国全般の不振や拡大を続ける中国の債務残高に投資家が懸念を示していることは間違いない。

香港にはアジアで時価総額最大級のIT企業テンセントなど巨大企業が上場している。テンセントの時価総額は今年1月のピークから2千億ドル以上減少した。

米中貿易戦争については、米国が勝利を収め、中国が歩み寄り早晩解決するという見方が多いと思う(私もそう考えている)が、米国株式市場が決着まで待ってくれるかどうかはわからない。

米国経済については楽観的な見方が多いが、株式市場については天井が近いと警鐘を鳴らす人が増えつつあると感じられる。

まあ、株価は上がり続けるものではなく、何時かは下落するものなので警鐘を鳴らしておくと「当たる」ことは間違いないと思っているアナリストもいるのではないか?とややシニカルにも見ているが・・・

リスクが潜んでいるといえば、米国の持続的な政策金利引き上げやイタリアのユーロ離脱の可能性など中国リスク以外にもリスクは多い。

香港株ほどではないが、最近はインド株(SEnsex)も大幅下落が目立ってきた。

新興国市場で出た損失を米国株の売却益で埋め合わせをしようと投資家が米国株の利益確定に動くと米国株も売り圧力に押されるだろう。

何が引き金になるかわからないが、米国株の堅調がいつまでも持続すると考えない方が良い時期が近づいてきたようだ。

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錯覚資産も資産の内

2018年09月10日 | ライフプランニングファイル

朝山手線の社内広告に「人生は運よりも実力よりも『勘違いさせる力』で決まっている」という本の広告が出ていた。

この「他人が自分に対して持っている自分にとって都合の良い錯覚」を錯覚資産と作者は呼ぶ。これはハローhalo効果の一種で「あるところが優れていると後光がさしたようにすべてが良く見えてしまう」ことを指している。

広告を読んだだけで筆者の言いたいことが凡そ分かったのでこの本は買わないことにした。(笑)

もっとも買ってまで読まない理由は、私自身意識せずとも「錯覚資産」の恩恵にこれまで預かってきたし、さらにこの先「錯覚資産」に関する技を磨いたところで、さほど得るものはないからである。

会社で人事考課訓練を受けた人は、人事考課でハロー効果を排除するように教えられたことがあると思う。

たとえば「遅刻が多い連中はすべてにおいてだらしなく信頼性がない」なとというのは、よく引用されるネガティブ・ハロー効果の例だ。

人事考課では一つの事実と一つの行動特性を結び付けるのが原則なのだが、実際の考課においては「一つ良ければばすべて良し」「一つ悪ければすべて悪し」的評価が下されることが多い。

同じミスを犯しても、日ごろ評判の良い人はアンラッキーだったという軽いネガティブ評価で終わるが、日ごろ評判の悪い人の場合は「基本姿勢ができていない」などと酷評されることがある。

どうしてこのようなことが起きるのか?と考えてみると、それは人間の脳の特性にあると私は考えている。

相手の個々の行動を分析して相手の特性を見極めるのは脳にとって負担の大きな作業である。一方ハロー効果によって、つまりある際立った特性から相手を判断することは脳の負担が軽いので、ハロー効果という現象が起きるのである。

このように考えるといくら人事部が評価研修を行っても、ハロー効果を排除することは難しく、評価される側はハロー効果を味方につけた方が良い訳だ。

実際世の中は「錯覚資産」や一種の「虚像」で回っている面が多い。真剣勝負の世界を渡ってきた人は「虚像」の大きさで相手を圧倒した故勝ち続けることができた側面があるだろう。

宮本武蔵は無論剣豪としての実像も大きかったが更にその映像を極大化した虚像の大きさでも戦う前に相手を圧倒していたのではないか?

サラリーマン渡世も勝負の世界とすれば、虚像もまた活用する必要があるということだ。

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災害対策グッズをまとめる

2018年09月09日 | ライフプランニングファイル
北海道地震、台風による関西地方の被害など災害リスクが高まっている。
私も自宅の災害対策グッズをまとめておくことにした。
山登りや海外トレッキングをやっているので、対策グッズは揃っている。
問題はそれらのグッズがタンスの引き出しに入っていて、いざという時にさっと持ち出せないことだった。
そこでそれらのグッズを日頃使わないカメラ用ザックにパックして壁にぶら下げておくことにした。

ヘルメットは沢登り用と自転車用の2つ。
私と家内二人分である。
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賃金も上がったが物価も上がった。そして金利も・・8月の米雇用統計

2018年09月08日 | 投資

昨日(9月7日)発表された米国8月な雇用統計。非農業部門雇用者増は市場予想を上回る201千人、失業率は7月に続き3.9%だった。

民間部門の時間給は前年比2.9%アップした。WSJは8月に賃金が上昇したのは、労働力の供給市場がタイトになり、働き手が雇用主に対し、交渉力を高めた証拠であると述べている。

賃金が上昇する一方物価も上昇している。労働省が発表している消費者物価指数は7月2.9%上昇した(前年比)。つまり物価上昇率と賃金の上昇率が肩を並べた訳だ。

野党民主党は「インフレ調整後の賃金が上昇していないのは、強い経済が労働者の福祉を改善していない証拠だ」と主張している。

一方ホワイトハウスは連銀が好む商務省の物価指数ベースではインフレ調整後の実質賃金はもっとよく見えると述べている。

8月の雇用統計が堅調だったことで、9月25-26日のFOMCで連銀が政策金利を引き上げる可能性は99.8%だとCMEのフェドワッチャーは述べている。

さらに12月に連銀が政策金利を引き上げる可能性も雇用統計発表前の70.9%から74.3%に上昇した。

昨日ダウは79ポイント(0.31%)ダウンした。投資家が連銀の一層の政策金利引き上げを懸念したことやトランプ大統領が中国に対し2,670億ドルの輸入品に関税をかけると発表したことが悪材料になった。

サマーラリーの言葉どおり8月の米国株は好調だったが9月はそうもいかないようである。

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「生涯現役」論を徒然草と葉隠で切る

2018年09月06日 | うんちく・小ネタ

2,3日前に安倍首相が日経新聞のインタビューで示した「生涯現役論」への道筋。ネットで検索すると「生涯現役」は「生涯奴隷」などと批判が書かれている。

内容はさておき「生涯現役」「生涯奴隷」の「生涯」という言葉は大袈裟だ。政治家とは大袈裟で大雑把な言葉を好む人種なのだろう。

安倍首相の「一億総活躍」などというのも大袈裟な言葉だ。どことなく戦前の「一億総玉砕」と響きが似ている。少し前まで「終身雇用」という言葉が一般的に使われていたが、これも大袈裟な言葉だ。終身雇用というのは、働きたいと思う社員がいれば終身雇用するという意味だろうが、現在そのようなファミリー的な会社は極めて少ないだろう。半世紀ほど前の日立製作所にはそのような慣習があったという話を聞いた記憶があるが今では夢物語である。

「生涯現役」も「終身雇用」同様レトリックであり、現実的には「70歳くらいまで働くことができる社会を作ろう」というところが政治家の本音ではないだろうか?

だが「生涯現役」などという全体主義的な言葉を聞くと私は反発を覚える。要は働く能力=employabilityがある人で働く意欲がある人が働きたいだけ働ける社会を作ればよいだけの話である。

一方たとえ働く能力があっても、自分の世界に入るため働かないという選択をする人も尊敬される社会でないといけないと思うのだ。要は個人の自由な選択を可能にする社会が理想なのだ。

兼好法師は徒然草の中で「名利に使われて、閑かなる暇なく、一生苦しむこそ、愚かなれ」と喝破した。

山本常朝は葉隠の中で「人間一生誠にわずかの事なり。好いたる事をして暮らすべきなり」と本音を語る。もっとも常朝はすぐその後で「このことは誤解されると害になるので若い連中には決して話さぬ奥の手だ」と但し書きをつけている。

葉隠というと「武士道とは死ぬことと見つけたり」という過激な意見が耳目を集めるが私はこれもレトリックだと考えている。江戸時代初期の鍋島藩というある意味では特殊な藩で「奉公」を全うするには「理不尽に死ぬ」ことがあっても従容と受け入れる覚悟が必要ということを常朝は述べたのであり、本音は「人生は短いのだから好きなことをして暮らすべき」ということなのだ。

その個人主義的発想は「名誉や利欲に縛られて生涯苦しむのは馬鹿げたことだ」と喝破した兼好法師の個人主義と通底している。

このような個人主義的発想は浅薄な「生涯現役」論の対局にあるものだ。だがレトリックというものは怖い。葉隠は「武士道とは死ぬことと見つけたり」という一フレーズを持って全体主義者に奉られることもある。「生涯現役」という言葉も全体主義的な使われ方をすると「生涯奴隷」社会の旗振りになる危険性なしとはしない。

人生100年といっても、健康寿命は平均的には70歳前半という。70歳まで働くとすると健康な生活を送ることができるのは5年以下ということになる。

もっともこれは平均の話なので、10年15年と健康な生活を送ることができる人も多いと思う。でも先のことはわからない。分からないから個人の選択肢が多い社会を作るべきなのだ。

自分で選択した結果については、人に押し付けられた行ったことによる結果より納得感があるからだ。要は好きなことをして暮らすのが一番納得感があるのだ。

 

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