金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

トランプ大統領は米国企業を中国から強制退去することができる?

2019年08月26日 | 相続

先週金曜日に623ポイント(2%)下落したNYダウ。日曜日(米国時間)のNYダウ先物も200ポイント以上下落している。

金曜日米国政府は、中国からの輸入品2,500憶ドル相当について10月1日より関税を30%(25%から)に引き上げ、3,000憶ドル分について15%(当初予定は10%)に引き上げると発表した。これは中国が750憶ドルの米国からの輸入品に追加関税を課すと発表したことに対する報復措置である。

またトランプ大統領は「中国に生産拠点を持つ米国企業に中国以外に拠点を移すことを考えるべきだ」と述べていた。

昨日(日曜日)トランプ大統領は「自分が望めば、米中貿易摩擦を国家非常事態と宣言することが可能だ」と述べた。

国家非常事態が宣言されるとIEEPA(国際緊急経済権限法)により、大統領は企業を相手国(この場合中国)から退去することを命じる権限を有すると解釈される(反対意見もあるようだが)ので、米中間が益々エスカレートする可能性が高まったという見方が広がった。

これが日曜日のNYダウ先物続落の背景だろう。なおトランプが実際に国家非常事態を宣言するのか?交渉を有利に進めるためのブラフなのかは分からない。ただし脅しの積りが実際の紛争になるということはしばしばあるところでこの先見通しは立たないというのが正しい判断かもしれない。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ボラタイルなマーケットではポートフォリオをチェックしない方が良い

2019年08月25日 | ライフプランニングファイル

先週金曜日の米国株市場は、中国の関税引き上げとそれに対するトランプ大統領の報復的な関税引き上げで荒れた。

現在フランスでG7が行われているが、そこで何か合意が生まれるか?あるいは意見の相違が一層明確になって終わるか?ははっきりしないが、私は後者の可能性が高いと考えている。つまり荒れた8月の最後の週も荒れる可能性が高そうだ。

そんな時CNBCのThe investing mistakes you want to avoid as the market sinks-and what to do instead

という記事を見かけた。この記事は相場が荒れている時はポートフォリオの時価をチェックするな!という行動経済学者ダン・アリエリーの考え方を紹介したものだ。

「予想通りに不合理」の著書でしられるアリエリー氏は「相場が荒れている時頻繁にポートフォリオの時価をチェックしているとその都度悲しくなったり、うれしくなったり感情が振幅する。そんな時投資判断をすると後で後悔することが多い。だから頻繁にポートフォリオをチェックするな」と述べている。

そしてもし「売り買いあるいは継続保有の意思決定をするなら、手持ち株を前提に考えるのではなく、今すべてキャッシュで持っている前提でどうするか?を考えるのが良い」とアドバイスしている。

この短い記事の中では「なぜキャッシュ前提でスクラッチベースで考えるのが良いか?」という説明は書かれていない。

簡単に解説すると自分のポートフォリオを前提にものを考えると「保有効果」(自分が持っている株を他の株より価値が高いものと考える心理現象)や「現状維持バイアス」で判断がゆがめられるからである。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アフラック株価、日本郵政スキャンダルで急落

2019年08月22日 | ライフプランニングファイル

アフラック生命(ニューヨーク証券取引所上場)の株価は昨日(8月21日)5.5%下落と急落した。

原因は日本のメディアで報じられた「日本郵政がアフラックの委託で販売するがん保険で、保険料の二重払いや無保険の状態が10万件あった」という報道だ。

アフラックは米国の保険会社だが、収入の半分以上は日本でのがん保険など医療保険や生命保険の販売で得ている。

またアフラックの昨年の四半期報告によると、アフラックの日本の売り上げの25%は、日本郵政の2万の郵便局が担っている。

単純に計算すると日本郵政はアフラックの売り上げの13%程度を担っている訳だ。

また日本郵政は昨年12月に、同社はアフラックの株式の7%を取得する予定だと発表している。

仕組みは分かりづらいが、数年すると日本郵政はアフラックの筆頭株主になる仕組みが裏にあるようだ。

今回の保険の不正販売問題は根が深い。当初不正販売件数は9万件という発表だったが、先月日本郵政はその数を18.3万件と倍増させた。

儲からない郵便事業を維持するために日本郵政は儲けの大きい保険商品を顧客に販売し、その収益で郵便事業を支えるというのが大まかな構図で、販売促進のノルマが郵便局員の不正販売を助長してきた訳だ。

なお保険の不正販売は論外にアウトだが、コンプライアンス違反にはならないけれど、顧客にとって過剰と思われる医療保険を販売しているケースは結構多いのではないだろうか?

実は私も長年アフラックのがん保険・医療保険に入っているが、あまり給付を受けたことがなかった。

ただ最近背中の脂肪種摘出時には条件が合致し、給付金を受けることができた。

ただし施術が保険金の対象になるかどうかはかなり微妙な場合があり、医師の診断書一つでアウトになる可能性があると思う。

このあたりのことを考えると医療保険は加入した後の管理(給付請求)が大変である。高齢者の場合、支援してくれる人がいないと給付請求を漏らす可能性が高いだろう。悪意で考えるとそのような給付請求漏れも保険会社の収益源になっているのだろう。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

米国の180名以上の経営者が「株主第一主義」から転換

2019年08月20日 | ニュース

米国大手企業の200名近い企業経営者で構成されるビジネス・ラウンド・テーブルが「企業目的声明」を刷新した。

彼等の企業目的は数十年にわたって、ミルトン・フリードマン流の「株主第一主義」だったが、JPモルガンチェースのダイモンCEO等のイニシアチブにより、「顧客に価値をもたらすこと」「従業員への投資」「サプライヤーに公正に倫理的に対処すること」「地域社会への貢献と環境保護」「株主に対する長期的な価値の創出」を企業目的に加えることにした。

ダイモンCEOは「アメリカンドリームは生きている。しかしほころびている」The American dream is alive, but frayingと述べている。

新しい声明を支持し、署名した181名の中にはアマゾンのジェフ・ベゾフ、アップルのティム・クックなど著名な経営者が並んでいる。

米国の経営者団体が企業目的声明を大きく変えた背景は、経済環境の激変とそれにより拡大する格差拡大の問題、そしてその問題に的確かつ迅速に対応できない政府の問題がある。

このビジネス・ラウンド・テーブルの動きは必ず日本の企業統治に影響を及ぼす。

「株主価値極大主義」で走ってきた企業経営者や経営者を支えてきた経営企画部等の幹部職員はこれから大慌てをするのではないだろうか?

特に大慌てをするのは、借り物の「企業目的声明」を使ってきた会社の連中である。

実は表現方法は異なれ日本には江戸時代からステークホルダー(利害関係者)を大事にする企業理念があった。

たとえば近江商人の「三方よし」である。「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」である。

売り手(企業=株主)は儲けるので「よし」。買い手には対価に見合う以上の価値をデリバリーするので買い手も「よし」。更には社会貢献に繋がるので世間「よし」である。

米国の動きを参考にして日本の会社も企業目的を見直すことには賛成だが、慌ててビジネス・ラウンド・テーブルの声明書の和訳をするような愚は避けて、近江商人の勉強をした方が良いだろう。風土に根ざすものは長続きするが、借り物は長続きしないからだ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

香港で衝突なく大規模デモ、40年間戦い続けるには平和なデモが良い?

2019年08月19日 | ニュース

先週末の香港ではこれまでの週末と異なり、平和なデモが行われた。デモの規模は主催者側発表では170万人と大きかったが、「逃亡犯条例案」に反対するデモが起きて以来最も平和的なデモだったと報じられている。

これは香港人と中国政府の間で何らかの歩み寄りがあった訳ではなく、香港の民主化要求グループが市民層の支持拡大を狙い、香港が特別行政地区の地位を失うまで戦い続けることを示したと見ることができる。非暴力的なデモに中国政府が強制排除などの暴力的手段を振るうことは世界中が監視しているので、困難と考えられるからだ。

中国政府が香港問題をどう取り扱うか?ということは中国が世界のリーダーになれるかどうかの試金石でもある。

習近平主席は2017年の共産党大会で「中国は豊かになり強くなったのだから、北京政府の最終目標は世界のリーダーになることだ」と演説した。

もっとも中国が世界のリーダーになる、ということについては中国の学者などの間でも議論があるようだ。

WSJは中国人民大学のCheng(成)助教授の「中国は世界のリーダーではないし、過去にも世界のリーダーだったことはない。それはまったく新しい挑戦なのだ。」という言葉を紹介している。

「中国が世界のリーダーだったことはない」というと唐などの帝国が周辺国と宗属関係を結び、朝貢を受けていたことを持って疑問を呈する方もおられるだろう。だがCheng助教授の頭にあるリーダーとは、そのような覇道による周辺国の支配ではなく、むしろ徳化による共生つまり古臭い言葉でいうと王道に近いものだろう。

中国の話なので、覇道だの王道だの随分古臭い言葉を持ち出したが、中国4千年の歴史は力による支配には限界があり、転覆されるリスクが高く、徳による支配は持続するということを教えている。

「徳とは何だ」ということを一言で説明することは難しいが、「他人の価値観を尊重する寛容さ」もその構成要素の一つだろう。そう考えると習近平を頂点とする中国政府が世界のリーダーになるための一つの条件は他人の価値観を尊重する寛容性を持つことができるかどうかであるということができる。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする