2週間前に見たNHKスペシャル「和食 千年の味のミステリー」はとても興味深くて、今でも忘れられません。
タイトルからはすぐにはわかりませんが、味噌や醤油をつくる発酵菌・米麹をテーマにしたもの。
米麹菌(アスペルギルス・オリゼ)は日本にしかいないカビで、1000年以上前に日本人のご先祖さまが天然のカビを家畜化したものではないか……など、びっくりするような内容でした。菌のタネをつくる「もやし屋」さんがまるでマッドサイエンティストのように見えたのは内緒です。
で、思い出したのですが、私が育った田舎町には1軒の麹屋さんがありました。たぶん、もやし屋から買った菌を、蒸した米で繁殖させ、それを売っていたのでしょう。お使いで麹を買いに行くと、古い町家の奥は米麹のふくよかな匂いがしました。
味噌をつくるための麹を買いに行く時は良いのですが、我が家でこっそり作っていたお酒のための麹の時は、「バレはしないか」とドキドキしました。どちらも同じ米麹なので、わかるわけはないのですが。
密造酒は売るのではなく、自家消費して楽しむものだったのですが、法に触れることに違いはありません。どこから仕入れた知識だったのか、そのうち税務署の人が踏み込んで来るのではと怖れたりしました。
でも、あれは純米酒の濃厚なやつだったのだろうなぁ。小さい頃の出来事なのでお酒の味がわからなかったのが残念。道具は田舎の家のどこかにあるはずだから、もしかしたらまだつくれるかも。
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ロッジが書いたウェルズ伝は「伝記小説」と銘打たれています。おおむね事実だが、細部はロッジが小説的想像力を働かせて描いたということでしょう。とても面白い。