午後0時半から六本木の国立新美術館講堂にて、第2回日経「星新一賞」表彰式がありました。
今回は、前日(昨日ですね)に受賞作がウェブで公開されたので、前もって読んでから出席しました。
「あの話を書いたのは、こんな人だったのか」と、興味が深まっていいですね。
受賞作の購読はこのサイトにて。日経ストアに登録したり、ソフトをインストールしたり、ちょっと面倒ですが、タダで読めます。
グランプリは相川啓太さんの「次の満月の夜には」。
相川さんは第1回でも準グランプリに輝いています。2回目にして最高賞受賞。
遺伝子改変させたサンゴで空気中の二酸化炭素を固定し環境問題を防止。うまくゆくかと思ったが……。技術の暴走を描いて、科学技術をコントロールすることの難しさを印象づけています。
相川さん自身、研究者として企業に勤めておられるそうで、作品では科学の怖さというよりは、「研究の面白さを伝えたい」と思って執筆されているとか。講評で石黒浩さんも「研究者にとっても刺激的な作品」と述べておられました。
準グランプリは岩田レスキオさんの「墓石」。
「私は墓石である。名前は岩田好男という」という書き出しからして、人を惹きつけるものをもっています。内容も意表を突く面白さ。
岩田さんは「20代の頃、あちこちの公募賞に応募していました。還暦を間近にして、四半世紀ぶりにまた書き始めたものの、なかなか結果が出なかったが、今回、中間審査を通過したという知らせをもらった時点で『自分の声が届いた!』と、本当にうれしく思いました」と述べておられました。中間審査は、大森望・鏡明・牧眞司・山岸真の4氏が担当。岩田さんはこの面々に認められたことに手ごたえを感じたようです。
優秀賞は3編。
本間かおり(男の人でした)「ママ」
馬場万番「世界が2019年を勝ち取るためのアイデアを募集します」
遠無計太「神の双曲線」
それぞれ、宇宙SF、タイムマシンによるドタバタ、臨死体験の追究――といった内容で、傾向はさまざま。
ジュニア部門のグランプリは、利根悠司さん「回路」。幸福を追い求めた結果、世界は……。
準グランプリは遠藤哲さんの「ノアの箱舟」。突如、彗星軌道上に出現した正体不明の物体の目的は?
優秀賞は本来4作品の予定だったのが、甲乙つけがたい傑作がひしめいていたので5作になったとか。
稲葉志門「白くなっちゃった」
黒沼花(紅一点でした)「アルモノ」
佐々木智大「未来の獏」
田上大喜「子供が欲しいプレゼントが映る鏡」
竹安宏曜「矛盾解消」
応募数は、一般……1167、ジュニア……767。
総評で、谷甲州さんは「入賞した後も読者に『声』を届けるには、書き続けるしかありません。が、SFを書くにはそれだけでは不十分で自分の得意な(科学の)部門を見つけて、研究者と対等に話が出来るように勉強をしてもらいたい。私はここで待ってますから、皆さんはこれから(私を)乗り越えていってください」と。
あとで谷さんに聞いたところ、上京は、昨日、飛行機で。帰りは、今日開通した北陸新幹線に乗るとのことでした。お住まいは石川県の小松市なんですよね。便利になったかな。