ETFつまり上場型投信が投資の本流にシフトしてきたという記事がウオール・ストリート・ジャーナル(8月1日)に出ていた。ETFは数年前にはエキゾチックな投資対象と考えられていたが、今や米国では主要な投資家に保有される投資の本筋商品になったということだ。
私は今ある雑誌に連続して「日本は何故金融で米国に勝てないのか?」という記事を書いているが、ETFが米国で急成長してきたことに問題を解く一つの鍵があるのではないか?と考えている。そのことは後段で書くとしてまず、記事のポイントを見ておこう。
- 誰がETFを保有しているかというデータを得ることは困難で、総ての数値は推測ベースではあるが、市場で大きなシェアを占めるファンド運営会社によれば、ETFの投資家は機関投資家から個人投資家にシフトしている。もっとも双方とも保有残高は伸びている。
- 6月末の米国のETF残高は3,351億ドルで過去1年間で38%残高が増加した。因みに日本のETF残高について一覧的な統計は見つからなかった、概ね3兆円程度である。(野村アセットの日経225ETF1兆173億円や同TOPIX8,983億円等大口ファンドを足し上げた)。1ドル115円で換算すると米国のETF残高は38兆5千億円で日本の10倍以上の市場規模である。ただしETF残高の伸びについては野村アセットの日経225は昨年12月から半年で27%も残高が増えている。
- 米国のETF市場で半分以上のシェアを持つバークレーズ・グローバル・インベスターズによれば、同社が組成するETFの個人シェアは2,3年前の5割から現在は6割に増加している。
- 残高ベースで個人のウエイトが高まっているが、日々のトレーディングの8割は機関投資家によるものだ。機関投資家の中でもヘッジファンドがETFの一番のユーザである。
- ETFはインデックス型投信に似ているが株式と同様証券取引所で取引される。ETFは透明性、取引のしやすさ、低コストが取引メリットになっている。
日本の上場型投信の状況を概観すると、日経225型やTOPIX型の残高は増えているが、個別セクター型(コア30、東証銀行株連動等)のETFの残高は横這いから減少、また廃止になったETFもある。流動性つまり何時でも公正な市場価格で売却できるかどうかということになると、日経225型かTOPIX型以外は注意しておく必要があるだろう。
一方ETFに較べて信託報酬等が高いインデックス投信ファンドは残高が横這いないし減少気味である。これから判断するとパッシブ型の投資においては、インデックス投信からETFにシフトが起きていることが推測される。しかしETFのメインプレーヤーが機関投資家なのか個人なのかは良く分からない。
ところで金融機関等投資信託を販売する立場からすると、手数料の少ないETFよりは手数料の多いインデックス投信、さらにはアクティブ投信に個人投資家を誘導したいという誘惑に駆られることは極自然に理解できる。しかし顧客の利益を考えるとインデックス投信よりはETFを勧めることが妥当であることはいうまでもない。ここに利益相反の問題が内在する。もっともアクティブリターンを追及するアクティブファンドと個別のアルファを追求する訳ではないETFを同列に論じることはできない。しかし歴史的に見てアクティブ投資が、その高い手数料を正当化するほど高いリターンを上げているかどうかということについて販売業者は個人投資家にきちんと説明しておく必要がある。
私は個人投資家が「取引コスト」や「流動性」あるいは「透明性」「アクティブ・リターンの限界」といったことに注意を払う様になるとETFの残高が伸びると考えている。つまりETFがどれ程個人投資家に受け入れられているかどうかということが、個人投資家の金融リテラシーを測定する指標となると考えられる。