金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

沢登賛歌

2006年08月30日 | 

趣味は?と聞かれる時、細かい説明が面倒なので「山登り」と答えているが、本当は「沢登と山スキー」と答えるのが私にはより正確な答である。更に沢登りを「登攀系」「ゴルジュ系」「ナメ系」に分けると今の私はナメ系である。ただしこの辺りになると関心のない方には全くチンプンカンプンだろう。少し解説すると「登攀系」とは大きな滝の登攀等岩登り的な要素を追求するもの、「ゴルジュ系」とは大きな淵などを泳いだりしながら突破することを目的とするもの、「ナメ系」とは比較的傾斜は緩くツルンとした岩=スラブで構成される明るい谷を登ることを目的とするものである。

Koinomata 写真は恋の又川上部の大ナメ滝

Sawajitate 沢登は目標を決め、計画を立て、装備を準備するところから始まっていく。左は沢登の主な道具だ。左上が沢靴、裏がフエルト張りで濡れた岩でも滑らない様にできている。右がスパッツ、靴の中にごみや小石の進入を防ぐとともにすねのプロテクターでもある。その前がヘルメット。その前がシュリンゲとアイスハンマー、カラビナ、ハーケン等。いずれも登攀道具と呼ばれるものだ。その前がザイル、これでパートナーを確保したり、急ながけから懸垂下降で下ったりする。その横が電池式の蚊取り線香。一夜のキャンプに欠かせない。

このような道具を持って沢を遡行するのだ。思えば一般登山道を歩くいわゆる夏山登山はレールの上を歩くサラリーマン生活のようなものだ。道には道標があり所によっては踏み出さない様にロープで歩くところが区切られている。コースタイムで管理され、夜は満員の山小屋でワイワイ言いながら寝る。荷物は軽く、危険性は少なく健康には良いが、心を振るわせる感動に出会うことも少ない。

岩登りは独立独歩の一匹狼そのもだ。酒や食事をコントロールして、筋肉を鍛え垂直の壁に挑む。ストイックであり極限のスポーツだ。しかし足元から数百メートル切れ落ちた岩壁の上の舞踏に心の高まりを覚えた若い日は私にとってもう過去のものになった。

沢登は道のない沢を自分で沢と対話しながら登りやすいところを登っていくロハスな山旅だ。そこには道標もなければ、山小屋もない。多少危険なところもあるがそれを補って余りある豊かな水と焚き火の饗応がある。お酒もほどほどに飲んで沢音を聞きながら眠るのが良い。

Narumizugentou 写真はナルミズ沢源流部のナメ。

明るい岩肌を爽やかな水が音もなく流れるナメ滝をヒタヒタとたどる時つくづく「沢登をやっていて良かった」と思う。そしてこの美しい地球でも希な美しい沢達に恵まれた日本に生まれ育ったことを本当に幸せだと思うのである。

コメント
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