米国で金利引き上げに一服感が高まったことから、株式市場が好転し東京市場もこれをフォローしている。しかし小型株は今だしの感だ。ウオール・ストリート・ジャーナルに中小型株についてはまだまだ株価が重そうだと思わせる記事が出てきた。株式投資に興味のある人は頭の隅に入れておいて良い話だろう。
- 米系資産運用会社ウイットニー社が運営する2つの日本株ヘッジファンドが苦戦している。ウイットニー・ジャパンファンド(2005年残高13億ドル)はこの7月末までに資産価値が23%下落、ウイットニー・セレクトファンド(同2億ドル)は29%下落している。
- シンガポールのヘッジファンドパフォーマンス調査会社ユーレカヘッジ社によれば、日本株に特化しているヘッジファンド104の内、47ファンドが今年マイナス運用になっている。また42ファンドは無回答でプラスのリターンを出しているのは15ファンドだけである。今年の損失は昨年の株価急上昇の反動である。ウイットニー社の料ファンドは昨年それぞれ40%、65%というリターンを上げていた。
- 今年は世界的に「質への逃避」が起こり、小型株や信用力の弱い会社に対して多くの投資家は神経質になっている。日本では1月のライブドア事件以来、中小型株は人気を失っている。
- 日本のヘッジファンドの一つの問題は、株価上昇を期待して株を買い持ちするという投資信託的手法をとっていることだ。このためファンドのパフォーマンスが株式市場全体の動向に大きく影響を受けている。米国ではある会社の株を買い持ちすると、他の会社の株を売り持ちするという方法で、市場リスク(専門的にはシステマティクリスク)を回避している。
- 日本では今年中小型株に比べ、日経平均やTOPIXはそれ程下落していない。前者は1.8%、後者は2.7%だが、TOPIX小型株は12%下落している。従って中小型株を買い持ちして、大型株を売り持ちするという手法では小型株の下落ほど大型株が下落しないので、小型株の下落をヘッジすることができていない。
- ヘッジファンドのパフォーマンス悪化で新しい投資家は尻込みしている。また幾つかのファンドは手仕舞いして、現金を投資家に返却するかもしれない。もっともウイットニー社のような大型ファンドが解散する見込みはより少ない。
以下は書いてないことながら「小型株は流動性が乏しいので、売りポジションを作るのが困難で、大型株を空売りして売りポジションを作っていたところ、小型株の下落が大型株の下落を上回ったためヘッジが効かなかった」ということだろう。しかしこれではヘッジにはならない。これは小型株の買いポジションと大型株の売りポジションを同時に持ったという方が良いかもしれない。ヘッジとは同じリスク特性を持つ資産を反対取引することで、リスクをニュートラルにすることである。
昨今中小型株のアナリストを増やす方針で臨んでいる証券会社もあると聞くが、マーケッティング強化には時間がかかるだろう。むしろ目先ヘッジファンドから中小型株の投売りが出やすいということに着目しておく方が良いだろう。