ウオール・ストリート・ジャーナルにアメリカでは「図書館がスモールビジネスを支援している」という記事が出ていた。かってアメリカに駐在した時時々図書館に行ったことがあるが、アメリカ人は良く図書館を利用していた。またライブラリアンlibrarianが概ね友好的で知的なサポートを行なってくれたことを思い出す。ライブラリアンに相当する職種を日本では司書というが、実際は似てて非なるものだ。従って敢えてライブラリアンという言葉を使おう。また日本の図書館の多くが公営無料貸本屋であるのに比べ米国の図書館は実業に有用な情報の拠点という気がした。これに関する私見は後述するとして、記事のポイントを紹介しておこう。
- 新興企業家達はオフィススペースや調査アシスタント、メンター(助言者・顧問)、マーケット・データベースを地方の図書館で無料に探すことが出来るかもしれない。
- グーグルの時代になって起業家達は、自宅のコンピュータから簡単に情報にアクセスできるようになったが、図書館も改革を試みている。幾つかの図書館は本来の姿としてスモールビジネスのインキュベーダーになっている。
- カンサス州オーバランドのある起業家は「ライブラリアンは我々の調査部門になっている。彼等は我々の無給のスタッフであり真に貴重なものだ」という。図書館毎に資源は異なるが、大部分の図書館は年に数千ドルかかる幾つかの商業データベースに加入している。例えばリファレンスUSAというデータベースが持つ数百万件の事業主と家計に関するセンサスデータとライフスタイルデータベースは強力なマーケット調査ツールとなりうる。起業家達はニューヨーク市のブルックリンにペットショップが何店舗あるか、それはどこに位置しているか、住民の収入レベルはどうかそして彼等は犬を所有する傾向があるのかどうかということを見つけることができる。
- オートバイのクリーニング・キットを作ったある企業は、ターゲットとしたいオートバイディーラーをデータベースで抽出し、クレジットレーティングを調べ、優良なスコアを持つディーラーだけのメーリングリストを作成した。ブルックリン公共図書館内ビジネス図書館のスーザンは「このような情報は人々の知識に基づいた意思決定の助けになる」という。
- 多くの図書館は授業や交流機会を増やすことで起業家を誘引することに務めている。例えば10年前に門戸を開いて以来、ニューヨーク図書館の科学・産業・ビジネス図書館は20の無料の講座で6万4千人の人々を教育した。テーマはパテント・商標からカスタマイズしたリストの作成にわたった。同図書館のマクドナルド役員は「図書館が行なっていることは、人々をウエッブサイトや本の情報に触れさせるだけではなく、専門家をフェイス・ツー・フェイスで人々と話させることに移っている」と言う。
さて私が日頃利用する図書館というと、西東京市の図書館である。そこには日頃の読み物はあるが、専門的な本やビジネスに直結する資料等はない。有料のオンライン・データベースを利用できるという話も聞いたことがない。図書館で本の受け渡しをしている人が司書の資格を持っているかどうかは分らないが、元々本のストックが限られているので専門的な本の有無について相談する気にもならない。これは勿論現場の人々の責任ではなく、この様に図書館を利用してきた我々市民や行政の責任である。
しかし情報・データベースを産業のインフラと考える時、米国は進んでいるなぁと言わざるを得ない。ここで学ぶべきは次の点だろう。
- マーケッティングに役立つデータベースをそろえ、それを出来るだけ多くの新興企業等が使える様にすること。
- 中小企業等に知的・情報的支援をするための大企業や富裕層からの免税寄付を認めること(米国では企業の寄付で図書館等が運営されている部分がある)。
- 図書館を無料の貸し本屋から脱皮させ、情報の集約拠点として活用することを考えること。