8月27日(日曜日)白毛門のゼニイレ沢を遡行した。ゼニイレ沢は白毛門頂上付近から、西に下り湯檜曽川に流れ込むスラブ(滑らかな岩)の沢だ。写真は今年6月上旬一ノ倉沢出会いから望遠レンズで撮影したゼニイレ沢の全貌だ。
以下行動概要。26日(土曜日)午前8時15分西東京市の自宅をM君の車で出発。水上で今夜のすき焼きの肉など買ってから、一ノ倉沢出会いまで車で往復。ゼニイレ沢には全く雪は残っていないことを確認した。
その後湯檜曽川沿いの道を車で5分程北上した駐車場まで車で入り、マチガ沢出会いにタープを張って一夜の宿とした。車を下山口の白毛門駐車場に戻しに行ったM君の帰りを待って岩魚釣を開始した。私はマチガ沢から下流へ、M君は上流へ向かうが魚影は殆どなく、1時間程で岩魚釣は断念。その後ルアーとフライの2人組みが上流に向かっていった。夕刻二人の釣果を聞くと岩魚が一匹ということ。湯檜曽川で岩魚に期待するのは困難な様だ。夜半小雨続く。
左の図は谷川岳-マチガ沢(左)-ゼニイレ沢-白毛門の断面図である。平均斜度はマチガ沢が28度で、ゼニイレ沢が29度である。一ノ倉沢を別格とすればこの付近でもっとも傾斜の強い沢がゼニイレ沢であることが分る。沢の困難さは平均斜度のみで決まるのでなく、最大傾斜や水量、岩の層など複数の要素が絡む。しかし傾斜のきつい沢が概して手強いことに変わりはない。
27日午前6時10分マチガ沢出会い発。暫らく湯檜曽川の右岸を歩いて、ゼニイレ沢の出会い到着。ガレが上流まで続き、水は伏流している。ガレを過ぎると長大なナメが広がっている。暫らく登って傾斜が少し強くなったところで、M君が「ザイルを出しましょう」と言うので、9m×40mでアンザイレン。3ピッチ100m程登ったところで傾斜が落ちたので、ザイルを解いた。ここでナメの状況が分かり、慎重に行けばザイルを使わなくても行けると見極めたので、これ以降ザイルを使うことはなかった。
その後小滝が連続したり、100mクラスのナメ滝(写真)が出てくるが、どこをナメと呼びどこをナメ滝と呼ぶか余り区別をつけにくい。今日は雲が低く垂れ込め、対岸の谷川岳も白毛門頂上の上部岸壁は見えないが、天気が良いと中々の高度感だろう。スラブ帯を登るポイントは水流から余り離れないことだ。側壁に寄り過ぎるとトラバースが大変になることがありそうだ。
上部逆くの字滝を過ぎた辺りで沢が二分しているところに出会う。左俣の方が水量が多く明るく見えたので、左俣に入ってしまうが、ここは右が本流でベストルートであった。100m程登ったところで間違いに気が着いたが、このルートを辿った遡行記録もあるので、そのまま進むことにした。ナメと小滝を越えていくと水は藪の中に消え10時20分尾根の頂上に着く。ここから白毛門直下までは根曲がり竹と石楠花等が密生する藪を1時間程漕ぐこととなった。11時10分頃白毛門へ登る一般道の登山客を右手に見ることが出来た。最後は藪をトラバースして11時20分登山道に出た。藪漕ぎで夜来の雨をまとっていた藪と格闘したため、上着までずぶぬれで結構寒い。白毛門頂上まで15分程度だろうが、割愛して下山。
ゼニイレ沢遡行の参考タイム(「上越の谷105ルート」)は3時間半だが、私達は5時間強かかった。藪漕ぎのロスもあるがやはり歩くピッチが遅そかったのだろう。今日の私は風邪気味で喉が痛くて全く調子が上がらなかった。しかし風邪を別にしても四捨五入すると私も60歳である。ピッチが上がらなくても致し方がないことかもしれないと慰めつつ、白毛門の長い下山路を辿った。体は疲れていたが心の中にはゼニイレ沢のスラブ帯を堪能した喜びがふつふつと沸いていた。