今日は嬉しいニュースを見た。それは伊藤清京大名誉教授がガウス賞の第一回受賞者になるという話だ。確率解析に関する「伊藤の公式」については、昔オプション理論を勉強した時見たことがあった。その式の内容は理解していなかったが、伊藤教授がオプションのプライシングに貢献していたことだけは分かっていた。日本人が世界の金融工学の発展に貢献していたことを誠に誇らしく思う。
さて今金融の世界ではアジアのLBO(Leveraged Buyout)が盛んになり、投資銀行が大量に人材を投入しているということだ。これは日本の金融界にも大きな影響を与えている。まず買収に伴う大型のファイナンス案件が発生して収益機会となっている。例えばソフトバンクによるボーダフォンの買収は150億ドルのディールだが、その内約110億ドル相当の買収資金は借入で調達されている。花王がロンドンベースのスキンケア会社モルトン・ブラウンを1年前に買収した時は、ウオール・ストリートの9つの企業が20億ドルの買収資金を融通した。日本だけでもシンジケーションローンの金額は2005年に2千億ドル相当に拡大している。ローンが拡大しているのは日本だけではない。韓国ではハイトによる焼酎メーカー真露(ジンロ)の買収のため約10億ドルのシンジケーションローンが組まれた。大型買収案件はまだまだ外資の独壇場だが、その内日系証券や銀行主導の買収案件も期待したいものだ。
また人材面でも色々な動きが出ている。まず投資銀行(外資の証券会社)が企業買収等の経験者をかき集めている。このため日本の証券会社や銀行から人材が流出している。証券会社や銀行はその穴埋めに社員を繰り回し更に大量の中途採用を行なっているという状態だ。また融資サイドでも人員の投入は眼を見張るものがある。邦銀でシンジケーションローンに力を入れているみずほコーポレート銀行はここ7年間でシンジケーションローン部隊を殆どゼロから220名以上の部隊にまで拡大させている。
仕事の間口が広がることは良いことだ。今までリストラに追われ金融先端部門で活躍する機会が少なかった邦銀職員には良いチャンスである。人材が流動化することも悪いことではない。色々な経験やノウハウが伝播するので積極的に歓迎するべきことである。新しい人材が産業の活性化につながるLBOやベンチャーキャピタル投資を促進することで、日本の経済が活性化していくのだ。
大手銀行にはまさにビジネスチャンスが到来したと言うべきだろう。金融工学の源流に伊藤教授の活躍があったことを思い、外資に商売を丸ごと撮られない様に頑張って欲しいものである。