今年の11月に韓国は初めてG20のホスト国になる。同時期に横浜でアジア・太平洋経済協力体(APEC)が開催されるが、G20をその前に開催するため韓国政府が強力に動いたという記事を少し前日本の新聞で読んだ。
昨日のFTはInto positionというタイトルで、経済活動のみならず外交面でプレゼンスを高めようとしている韓国の状況を紹介していた。記事は日本で「ハーグ密使事件」から書き始める。ハーグ密使事件というのは、第二次日韓協約により外交権を日本に接収された韓国が、1907年にオランダのハーグで開かれた平和会議に密使を送り、韓国の外交権保護を訴えようとした事件だ。だが彼等は会議出席を拒まれた。密使の一人イ・ジュンYi Jun李儁はホテルで客死した。韓国ではイ氏の死を伝統的に自殺としているようだが、病死という説もある。FTはKorean tradition says, Yi killed himself in his hotel room.と説明しているが、客観的な解説というべきだ。密使事件の3年後、1910年8月に日韓併合条約が調印された。今年は日韓併合からちょうど100年目に当る。
FTは韓国は世界的なリセッションからいち早く脱却した国の一つというだけでなく、人民元問題をはさんで対立する中国とアメリカの架け橋になろうとしていると述べる。商売っ気の強い李 明博大統領は「世界は二つのグループに分けることができる。一つはグローバルなルールを定めるグループで、もう一つはそれに従うグループだ」と述べて、ラジオ演説で「韓国はルールに従うグループから、課題を決定するグループに変身することに成功した」と述べている。
李大統領はハイチ地震の救済に関して、義捐金の拠出、救援隊の派遣等で指導的な役割を果たしたと信じられている。李大統領は世界の危機に対して軍隊をより積極的に派遣することを望んでいる。韓国は既にソマリヤ沖の海賊対策に艦船を派遣しているし、アフガニスタンではインフラ作業の警備に当ることを約束している。
韓国は経済活動で幾つかの分野で世界をリードするまでになっているが、外交プレゼンスもそれに合わせて高めようということだ。また外交プレゼンスを高めて、原子力発電所の工事などを受注しようという官民一体の動きも見えてくる。
韓国の海外投資や海外受注が活発化していることや韓国企業が高収益を上げていることは、日本のメディアでも伝えられているところなので重複は避けるが、サムスン電子の利益が日本の電子機器メーカー15社合計の利益を上回っていると聞くと考えさせられるものがある。
韓国の現在の一人当たりGDPは約2万ドルで日本より5千ドル少ない。しかしある予想(When China rules the worldの中の資料)によると、2050年には韓国は米国と並んで世界で一番一人当たりGDPが高い国になっている(一人当たりGDPは9万ドル)。この時日本は世界8位で韓国と一人当たりGDPの差は2万ドル(2006年の貨幣価値で)!になっている。
将来のことはあくまで予想に過ぎないし(かってジャパンアズナンバーワンといわれたこともあった)、そもそも50年先まで私が生きていることはないので、将来GDPが逆転することを悩む必要はないだろう。
しかしである。台頭する中国やインドのパワーをフルに活用する韓国が色々な面で日本に迫り追い越しつつあることから我々を学ばなければいけないことが沢山あるのではないだろうか?
因みにFTは「韓国はインドの香港になろうとしている」というある評論家の意見を紹介していた。中国への海外投資が初期の段階では香港を経由したように、サムスン電子やヒュンダイ自動車などの韓国企業がインドに静かに忍び寄っているという意味だ。