金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

中国の年金基金の後追いをするのも手か?

2010年03月30日 | 金融

昨日(3月29日)のFTは、中国の国家年金基金である「全国社会保障基金」の戴相竜(Dai Xianglong)理事長が欧米への投資を拡大すると述べたことを報じていた。色々な情報を持っている大きな機関投資家の動きをフォローするのも一つの投資手法とすると、全国社会保障基金の理事長の意見は参考になる。

全国社会保障基金の規模は7,770億人民元(約10兆円)だから、日本の公的年金(GIPF:年金積立管理運用独立行政法人)の資産規模(122兆円)の約10分の1だ。だが社会保障基金は拠出額を増やし、向こう5年間で倍以上の2兆元まで拡大する予定だ。

戴相竜理事長は米国の経済見通しに強気の見方を示し、「5年で輸出を倍にするという目標を達成できるだろうし、時間はかかるが米国経済は金融危機から回復を続けるだろう」と述べている。また欧州については「国の債務の問題は悪くはならないが、欧州の社会保障システムは多くの国にとって経済の重荷となり成長の足かせになるだろう」と述べた。

戴相竜理事長はまたインドや他の高度成長国にも投資機会を求めたい、特に直接投資やグローバルなプライベート・エクイティに興味があると述べている。

昨年末の社会保障基金の海外投資比率は約6.7%だが、これを20%まで引き上げるマンデートがあるという(因みにGIPFの海外資産比率は19%程度)。中国は人口のピークに達し、向こう数十年間で急速な高齢化が進むので、社会保障基金は国民年金のラストリゾートになるので、しっかり投資収益を稼ぐ必要がある訳だ。因みに同基金は2008年には6.8%のマイナスになったものの、09年度は16.1%のリターンを上げている。

なお元人民銀行総裁であった戴相竜理事長は「米ドルがリザーブ・カレンシーの立場にとどまることを期待している。人民元は長期的には上昇するだろうが短期的には安定している。株価が上下することは当たり前のことだが、2010年は難しい年かもしれない」と述べている。

☆    ☆   ☆

極めて個人的な意見だけれども、中国の全国社会保障基金のような投資家には、相当脂っこい情報も集まっていると思っている。

中国はインサイダー情報の国である。一例を上げると中国で大きな成果を上げているプライベート・エクイティ・ファンドにNew Horizon Capitalというファンドがある(ドイチェバンク、JPモルガン、シンガポールのTemasekなども参加)。このファンドには温家宝首相の息子Winston Wen氏が参加している(いわゆる太子党)。機微情報の入手や規制の裏をくぐる上で極めて有効であることは想像に難くない。当然海外の機微情報なども有力な投資銀行等から流入していると考えて良いだろう。

私は社会保障基金が米国に楽観的なビューを持っているということは注視しておいて良いと考えている。

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「ペイアズユーゴー」雑感

2010年03月30日 | 政治

今日に日経新聞に政府が財政健全化に向けて、税収や歳出に見合う財源を確保する「ペイアズユーゴー原則」を中期財政フレームに盛り込むという記事が出ていた。

Pay as you goとは、「現金で支払う」「支出を収入内に抑える」という意味で、名詞としては「その都度払い」「(回線使用料などの)従量制~反対概念はFlat rate」という意味がある。Goには「金などが費やされる」という意味があるので、使ったものを払うということだと私は理解している。

私がペイアズユーゴーで思い出すのは、公的年金の賦課方式である。公的年金には事前積立方式と支払う年金をその時の税収・社会保険料で支払う賦課方式があり、賦課方式年金をpay-as-you-go-pensionという。

賦課方式年金の代表的な例が米国の公的年金Social Securitiesで米国の老齢年金・遺族年金・障害者年金を包括するシステムを指す。因みに日本の公的年金は事前積立と賦課方式の混合型である。

Pay as you goを英英辞書で調べると、1830年頃Americanismという本?の中で始めて使われたという説明が出ていたので、クレジットカードやセカンド・モーゲージ・ローンを使って消費を謳歌したアメリカ人も一昔前は、pay as you go精神を大事にしていたのだろう。

ところでSocial Securitiesは、米国の年金システムの代名詞であるとともに、納税者番号制度でもある。納税者番号制度については政府税制調査会(会長・菅副総理)が、その導入を検討するプロジェクトチームの設置を決めている。

10年前住基ネットの導入に大反対していた民主党が、納税者番号導入に積極的になることは多少の違和感があるが、「過ちはあらたむるに憚ることなかれ」である。この納税者番号の導入については、超党派で推進していただきたいと私は考えている。そもそもペイアズユーゴー予算を実施していくには、強固で国民の納得感のある税制基盤がないといけない。現在の税制のように、所得把握が簡単で徴税が簡単な給与所得者から税金を取るという発想は限界に来ている。

納税者番号制度に反対する人の主張は「個人の財産や収入をお役人に知られたくない」というもので、旧社会保険庁の職員が有名人の年金データを不正に閲覧したことなどもそのリスクとして引用された。

だが納税者番号制度というものはかなりの国で導入されている。ウイキペディア英語版を見るとアジアでは、お隣の韓国、中国を初めインド、インドネシア、マレーシアなど多くの国で導入されている。日本人がこれらの国の人々より、収入を政府に把握されたくない特別の理由があるのだろうか?

納税者番号あるいはソシアル・セキュリティ番号の欠如は年金記録の不備などを通じて、莫大な無駄の原因になっていると私は感じている。ペイアズユーゴーともに早期に納税者番号を導入することを私は強く希望している。

コメント (1)
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