先週は雨が続いて寒かった。その雨の中を登山用の雨具を買いに恵比寿のモンベルに行った。10年以上使っていた雨具はこの前の安達太良山登山の時、かなり防水性が落ちていることが分かったので、買い換えることにした。
古い雨具には愛着があった。夏沢登りに行くと昼間の天気が良くても、夕立にあうことが多い。そんな時は雨具を着てむずかる焚き火の世話をする。だから僕の雨具には微かに煙の臭いがしみついている。ゴアテックスの雨具は雪山でも活躍した。残雪期の山では風を防ぐアウターとして活躍した。僕の雨具には白馬岳・金山沢の胸のすくような大滑降など沢山の思い出が詰まっている。
二代目の雨具もモンベル製にした。モンベルを選ぶ理由は二つある。一つは値段が海外メーカー製より少し安い。本格的な登山用の雨具はゴア・テックス社が特許を持つ防水性と透湿性を兼ね備えたナイロン生地を使っている。いわば一昔前のウインドウズ・パソコンにおけるマイクロソフトのOSのようなものだ。つまりゴアテックスの生地を使っている限り、メーカー別の製品差はそれほどない。
もう一つの理由は日本人の体格に合わせたサイズで縫製している点だ。海外メーカーのものは、手足の長い人には向いているが、私のように胴長短足系には不向きだ。
久し振りに雨具を買いに行って三つのことに気がついた。一つは雨具が上下セットになっておらずバラバラに買うことができるということ。次に雨具がかなり軽くなり、小さく丸めることができること。そして最後はかなり松竹梅ができてきたことだ。
上下セットでない理由は幾つかあるだろう。まずファッション性。一昔前の雨具は上下お揃いで色はブルーなど地味な色が多かった(因みに僕のブルーグレーの雨具を着ていた)。だが「今は上下別々の色が主流です」とモンベルのお兄さんが教えてくれる。そこで僕も写真のように上下別々の雨具を買うことにした。
上はレッドブリックつまり赤レンガ色で下はブラック。「レスキュー隊みたいで格好良いですね」とモンベルのお兄さんがおだてる。
上下別々の選択ができるもう一つの理由は、上と下で違うサイズの雨具を揃えることができるからだ。僕は上はMで、下はL-Sにした。L-Sというのは、ウエスト周りはLだけれど長さはSつまり短いというサイズだ。こういうサイズが揃っているということは、僕のように手足の短い中高年の登山者が増えている証拠なのだろう。
他のメーカーがこのようなサイズを揃えているかどうかは知らないが、モンベルが胴長短足系のアウトドアマンに優しいことは確かだ。
雨具の上下を別々に揃えることができる最後のメリットは上下で雨具の松竹梅を変えることができる点だ。僕の定義では梅の雨具は「ゴアテックスを使っていない雨具」、モンベルを含めて幾つかのスポーツ用品メーカーは独自開発した生地で雨具を作り売り出している。これらの生地は試験数値ではゴアテックスに比べ、防水性で劣るが、使う目的では十分実用的である。つまり軽登山に万一の雨に備えて持っていく程度の雨具であれば「梅雨具」で良い。
竹と松はゴアテックスの中の生地の厚さ・薄さや伸縮性の違いである。
さてこの松竹梅と雨具の上下がどう関係するかというと、一般に雨の影響を大きく受ける上には、松や竹の雨具を選び、それ程影響は受けない下は値段の安い梅雨具とする手があるからだ。
で今回どうしたか?というと、僕は竹雨具にした。つまりゴアテックス生地の中でパフォーマンス・シェルというポピュラーで安いものだ。残雪期に使うことを考えると「梅」では少し不安が残るからだ。それでも上下で2万5千円程するから登山道具は安くない。
モンベルの店を出た時も強めの雨が降っていた。ふと僕は「この新しい雨具を何年位使うのだろうか?」と思った。10年使うと僕は70歳になっていると思うと少し背中が寒くなった・・・・・。
その夜、自宅のパソコンに大学山岳部の大先輩からメールが届いていた。曰く「3月初めに大腸ポリープを取ったが、この前テストを兼ねて中央線笹子付近で8時間程山を歩いた」。この方は70歳代後半とお聞きしている。
そうなんだ。精進を重ねていればまだまだ山を歩くことができる。新しい雨具を又買い換える積もりで山に登ろうと僕は今考えている。