金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

ワイヤレス・ヘルス・ケアへの道筋

2010年04月10日 | 健康・病気

アップルのiPadが米国で発売された時、私は「お年寄りにこそ多機能端末を」というブログを書いた。iPadのように無線機能を持つ多機能端末を福祉や医療に活用してはどうか?という意欲的な提案だった。あんまり反応はなかったが。

ところが今日エコノミスト誌にWireless health care:When your carpet calls your doctorという記事が出ていた。ワイヤレス・ヘルス・ケア「カーペットがあなたのお医者さんを呼ぶ時」というタイトル。カーペットが医者を呼ぶ?この意味は本文を読まないと分からない。意味は後ほど紹介しよう。記事のポイントは「無線端末を医療と健康管理に活用する試みが米国や発展途上国で活発化している」という内容だ。日本の状況についてインターネットでざっと調べたが余り具体的な動きはないようだ(PUCCのプレゼンメモが一つあったが)。

エコノミスト誌の記事は「iPad騒ぎの中で一つの潜在的な利用方法が見落とされていないか?」と書き出す。一つの潜在的利用方法が医療と健康管理だ。

市場シンクタンクのKalorama Informationによると、ワイヤレス・ヘルスは病院で普遍的になりつつあると述べる。同シンクタンクは米国だけでこのようなデバイスの市場は2007年の27億ドルから2012年には96億ドルに拡大すると予想する。

ワイヤレス・ヘルスは先進国のみならず、発展途上国でも拡大している。マッキンゼーは業界規模は全世界ベースで直ぐに600億ドルに達すると予想している。

医師はワイヤレス・ヘルスの初期のターゲットになっている。カリフォルニア・ヘルスケア基金(シンクタンク)が近々発表するレポートは、米国の医者の3分の2は既にスマートフォンを持っている。3分の1の医師はEpocratesというモバイル・ラップトップようのプログラムを使っている。このプログラムは「薬と薬の間の相互作用」や推薦する治療方法などを提供している。

私が軽い病気で病院に行くとセンセイが分厚い本をひっくり返して、薬の飲み合わせ?を調べていることがあるが、あれがオンラインでできる訳だ。

まもなくこのEpocratesからモバイルを通じて、患者の電子的な健康記録(EHRs)を入手することが可能になる。レポートの著者はこれは「もの凄いアプリケーション」だと評価している。

スマートフォンから電子健康記録、ヘルス・モニターリング・デバイスにわたる新技術の素早い動きにより、患者と医師はコストを下げながら、成果を改善することができる。患者サイドのデバイスを見ると、米国のJitterbugというモバイル・オペレーターは高齢者に使いやすい電話にさらにヘルスサービスを加えた。

患者サイドのデバイスについては日本のPUCCのプレゼンメモを見ると携帯心電計、血圧計、生活習慣記録機などに携帯端末などのゲートウエイにデータが送られる図が出ているので同じようなものだろう。

デバイス関連でもっとも成功しているのは、インテルのEric Dishmanだろうとエコノミスト誌は述べている。ここで冒頭のカーペットの話につながるのだけれど、同社の「魔法のカーペット」は、患者の誤った動きを感知し、転倒することを予測することができる。そこで「カーペットが医者を呼ぶ」という訳だ。

これらのデバイスやサービスにより医師はより正確な診断と効果的な治療や患者の健康状態の管理を行うことができるが効果はそれだけではない。患者の好みや行動特性に合わせたカスタマイズされた治療が可能になる。

製薬大手のジョンソンアンドジョンソンの健康サービス会社healthmediaはデジタル・ヘルス・コーチというオンライン・ツールを使って患者の糖尿病と体重管理の手助けを行っている。研究によるとオンラインで指導を受けた患者の半分が体重を減らし、生活習慣病の改善により年間1千ドルの医療コスト削減につながっているということだ。

エコノミスト誌は「患者はしばしば医者の指導を無視して協力的な友達や家族の意見に耳を貸す。それと同じように医者や看護師はいつもそばにいて、健康的な行動を取るように励ましてくれないが、携帯電話などの無線デバイスは励ましてくれる」と結んでいる。

☆   ☆   ☆

「多機能端末をお年寄りに」というブログを書いた時点では、ここまで海外のワイヤレス・ヘルス・ケアが進んでいることは知らなかった。他のことを調べていて偶然何かを発見することをセレンディピティSerendipityというがまさにそれを得た感じだ。今月の雑誌の原稿はこの話を膨らまそうと考えている。

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