昨日(4日)のFTによると、中国建設銀行の郭?清Guo Shuqing会長は同紙に「9.5%を超える中国の経済成長は大いに問題がある」と述べた。彼は過大な経済成長は重複した建設や、過剰な設備を生み、資本を浪費すると警告を発している。
中国の第1四半期の成長率を年率換算すると、11%から12%になると推定されるが、このようなハイペースの成長は健全でなく、持続的でないと同会長は述べる。何故なら中国の資源輸入が世界中のコモディティの価格を急騰させ、発展途上国にマイナスに作用するからだ。
一方ドル元為替問題について、米国は今月15日に発表する為替レポートで中国を為替操作国に指名することを見送った。見送った理由についてガイトナー財務長官は、これからの3ヶ月間で米中のハイレベルの政治家の間で多くのミーティングが予定されているので(その場で解決をはかるべく)、為替操作国に指名することは見送ったと述べている。
オバマ政権のサマーズ国家経済会議委員長は昨日「中国を含めて幾つかの国で商慣習に関する明らかに重大な問題がある」と述べた。
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これらの話から幾つかの推測をしよう。一つは中国の中で「インフレや資産バブルを懸念する」陣営が発言力を高めていることだ。代表は周小川人民銀行総裁。米国や先進諸国の経済問題の首脳が、このインフレ懸念派の声を上手く利用して、中国の面子を潰すことなく、人民元の高め誘導(あるいは市場連動)に持っていくことができるかどうかという点だ。
先週金曜日に発表された米国の雇用統計は、市場予想通りで過度に楽観的になることはできない~私は今のドル円為替の水準は少しオーバーヒートしているのではないか?と懸念している~が、オバマ政権が経済の舵取りに自信を深めつつあると思われ、サマーズ委員長等の発言力が力を増しそうだ。
そのサマーズが幾つかの国で商慣習に問題ありと指摘しているのは少し気になるところだ。狙いは中国の人民元だろうが、日本もスケープゴートにされる可能性なしとはしない。例えば郵貯や簡保の預入額・保険上限額が引き上げられるということも、米国側の攻撃目標になるだろう。
リセッションの最悪期を脱し、リバランスに向けて新しい軌跡をたどり始めた米国とオーバーヒートした経済を少し戻して、巡航速度を維持したい中国の上層部がこれから何を話してどのような絵を書いていくかということは興味のある問題。
日本も新しい絵を描かないとこの流れに乗り遅れるのではないかと懸念する。