金融そして時々山

山好き金融マン(OB)のブログ
最近アマゾンKindleから「インフレ時代の人生設計術」という本を出版しました。

ギリシアの問題は欧州の金融機関の問題に発展

2010年04月29日 | 金融

ギリシアに端を発する国債危機は4月28日スペインに飛び火した。S&Pがスペイン国債をAA+からAAにダウングレードした。FTによるとOECDのチーフはこの国債危機の感染状況を「エボラ熱」の伝染に例えている。

スペインでは国債利回りが4.127%に上昇。株価は3%下落した。ギリシアは向こう3年間で1000億ユーロから1200億ユーロの資金が必要とされると推定される。現在提案されている450億ユーロのファイナンスでは、1年分の不足資金をカバーするに過ぎない。

ところでニューヨーク・タイムズはAlready holding Junk, Germany hesitatesという記事で、ドイツの金融機関は既にギリシア国債を十分持っているので、格付低下に悩んでいるという事実を明らかにしていた。銀行のギリシア国債保有額を推定したのはバークレイズ・キャピタルで、ドイツの金融機関は既に370億ドルのギリシア国債を保有している。中でも多額に保有しているのはHypo Real Estate Holdingで105億ドルのギリシア国債を保有している。このHypoは昨年ドイツ政府が救済した金融機関だ。つまり税金が投入されている訳だ。ギリシアの格付が下がり、政府支援を行っているドイツの銀行のバランスシートが劣化すると、最終的にはドイツ国民の負担が増えることになる。

スペインの大手行は今のところ最悪の金融危機から逃れているが、もしポルトガルの国債がギリシア国債のように価格が下がると大きな含み損を被る可能性がある。タイムズはマドリッドを本拠とするSantander銀行は640億ドル相当のポルトガルの資産を持っていると報じている。

欧州各国国債の格付悪化と債券利回りの上昇(価格の下落)は、国債を大量に保有する金融機関のバランスシートに大きなインパクトを与える可能性がある。そしてそれは金融危機時に公的資金を投入された銀行のバランスシートが悪化する場合、最終的には各国の国民の負担が増えることになる。

水曜日には米国連銀の公開市場委員会が「景気が回復する中でも低金利持続する」と発表したので、世界の株価は少し戻した。

このところ四谷怪談の戸板返しのように、ギリシアなど南欧諸国の国債の信用問題で市況が悪化する日と米国の企業業績や金融政策を好感して市況が好転する日が目まぐるしく変わる。

連休明けの戸板はどうなっているのだろうか?

コメント
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